内容説明
戦国時代を代表する知将・真田昌幸の嫡男真田信之は、父や弟・信繁と別れて徳川側につき、真田家を守り抜いた男として知られる。「実直なお兄ちゃん」というイメージが強いが、若い頃は戦(いくさ)において、昌幸の制止を無視して無茶をしたこともあったようだ。その後紆余曲折あり、父子の別れの場面である「犬伏の別れ」では見事な決断力を発揮する。この決断力は晩年の「真田騒動」でも発揮された。関ケ原の合戦後、信之は相次ぐ浅間山噴火や戦災で荒廃した領国の復興に取り組む一方、上田の城下町や沼田の城下町の整備をすすめた。その後徳川家にとって重要な藩であった松代藩に転封。やがて「天下の飾り」と呼ばれ、徳川将軍三代家光や、四代家綱が隠居を許さない存在となった。義を重んじた男の九十三年にわたる生きざまを、真田家研究の第一人者(大河ドラマの時代考証担当者)が綴る決定版。
感想・レビュー
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buchipanda3
18
著者は「真田丸」の時代考証担当の一人。大坂の陣以降の真田家はどうだったのかというのと信之の立場からの真田家を読んでみたいと思い手に取った。前半は父昌幸と共に歩んだ歴史。堅実な働きぶりは昌幸からの信頼が厚かったことを伺わせる。後半は主に信之による内政。戦乱後の領内再建ぶり、真田家存続のために発揮した政治力などが目を引く。そして家綱の代まで仕えたとは。実直な姿勢で時代の移り変わりにも適切に対応していく手腕が見事と思った。信之以降、松代藩は明治維新まで真田家で続いたとのこと。堅実さ継承か。まさに礎だった。2016/12/30
叛逆のくりぃむ
11
真田昌幸の嫡男であり、家康、秀忠、家光、家綱と四代に亘って仕えた真田信之の評伝。決定版という謳い文句に恥じず、非常に広範に記述されている。93まで長生したことから考えれば当然であるが、関ケ原以後の記述が多い。自然災害、弟の大坂入城、息子の後継者問題と難しい判断を迫られる中、齟齬なく判断を下していく様子は、非常に興味深かった。2016/09/18
ペロ
8
戦国時代は家を存続することは攻めること。やらなければやられる。真田家では幸隆や昌幸が大活躍した。かたや太平の世では家を存続することは守ること。この地味だが重要な役目に生涯を捧げたのが信之だ。享年93才はかなりの長生きだが,子や孫に先立たれるなどの不幸のため死んでも死にきれなかったのかもしれない。本書で信之を深く知ると信繁がちょっと小さく感じる。父と弟の助命に奔走し,苦しい経済状態ながら大量の米を九度山へ送り続け,大坂の陣後は信繁との内通の疑念を晴らすべく再度奔走する。まさにこの兄あってこその信繁なのだ2016/10/23
kiriya shinichiro
7
労作。某さんと違って、むやみに結論を出さない態度をつらぬいていて、好感がもてました。黒田さんの本も読んでみたいと思いました。しかし、浅間山が噴火しすぎ。これじゃみんな上田から逃げちゃうよな……農家、じゃないよ、お百姓さんが全滅しなかったのが不思議なぐらいです。誰でも苦労するよね。あと小松姫がちゃんと九度山に仕送り手伝ってたのは好感度アップしました。20年近くも(幕府命令で)隠居できなかったのに、息子に恨まれるとか、ほんとお兄ちゃん可哀想だなあ……お通さんと文通ぐらい、させてあげていいよ。2017/02/12
いろは
5
元々一般的な知名度以上の「真田家を守った名君」という認識はあったが、徳川幕府に警戒され、天災が続く中、領民のためにどのような施策を執ったのか、政治家としての信之の行動が資料をもとに具体的に描かれていた。時々挟まれるエピソードが人間味をより感じられて興味深い。2016/11/18