内容説明
江戸後期、大岡越前の裁判小説が人気だったように、日本人は元来、謎解きが大好きだった。だが、ポーの「モルグ街の殺人」にはじまるミステリーが受容され、国産の推理小説が定着するためには長い茨の道が必要だった。黒岩涙香による本邦初のミステリー、探偵小説でデビューした泉鏡花、『新青年』と横溝正史、社会派という新ジャンルを切り開いた松本清張や「日本のクリスティー」仁木悦子まで、オールスターで描く通史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
46
江戸時代の比事物から松本清張に至るまでのミステリの流れを追った一冊。著者の専攻分野に関わるためか明治時代の記述多し。その為、明治の日本ミステリ受容史といった印象を受ける。その部分は黒岩涙香くらいしか知識が無いため、面白く読むことは出来たけど。それにしても純文学からミステリが一段下に見られるというのは、あの時代から変わっていないわけだな。大衆に与えた影響は明らかにこっちが上っぽいのに。個人的に一番面白かったのはやはり乱歩、正史といった大正期の部分。それと新本格に触れている部分がないのもちょっと不満かな。2014/10/02
佐島楓
34
とてもよかった。世界的にミステリと位置づけられる最初の作品とは何か、日本国内ではどうだったか、詳細に丁寧に書いてある。難解ということもなく、多くの知識が得られた。明治以降のミステリブームにおいては、ほぼそのままが文学史と呼んでも良いくらい、さまざまな文豪が執筆していることを知った。個人的に勉強しているところと重なる部分も多く、役に立った。2015/02/20
本木英朗
23
『日本ミステリー小説史』については、俺は2014年に一度読んでいて、今回で2回目である。なぜ日本はミステリー大国になったのか?というような感じで様々なことが書いてある。どれもこれも面白くて、すごく楽しかった。またいつか読んでみようと思う。2020/03/26
そうたそ
23
★★★★☆ 著者が近代文学の専門ということもあってか、その時期を中心として書かれたミステリー史。ポーの登場以前のミステリーの話とか、明治期のミステリーのあれこれなど、なかなかディープなところまで語られており新鮮だった。余談だが、大下宇陀児の写真がくりぃむしちゅーの有田に見えて仕方がない。2019/12/17
sawa
17
★★★☆☆ どのような過程を得て日本はこれほどのミステリー大国となったのか。明治の翻訳ミステリーから昭和初期の文豪によるミステリーにページが大きく割かれている。紹介される作品が読みたくなったけれど、ほぼネタバレしているのが残念。(図)2015/03/03