内容説明
「その日を死に番と心得るべし」との覚悟で幾多の合戦を生き抜いた藤堂高虎。織田信長亡き後、豊臣家に三顧の礼を持って迎え入れられるが、秀吉は茶々との愛欲に溺れ、天下人としての資質を失っていく。落胆した高虎は一時出家さえ試みるが、徳川家康から届いた一通の手紙に心を動かされ、再び下天を謀る決意を固める──。「戦国最強」との誉れ高い異能の武将を描く本格歴史小説。
感想・レビュー
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yoshida
152
藤堂高虎を主人公とした歴史物。珍しい作品で興味深く読めます。今までの藤堂高虎のイメージは司馬遼太郎氏の「関ヶ原」や「城塞」にあるように、機を見るに敏、時の権力者を見抜き、その権力者に付き徹底的に暗躍する武将でした。本作では藤堂高虎は豊臣秀長の薫陶を受け、民衆が安寧に暮らせる世を創る、私欲のない人物と描かれています。徳川家康も野心が無いという設定。史料の見方や解釈により、こんなにも武将のイメージが変わるとは思いませんでした。豊家の悲しさは一門、譜代に恵まれなかったこと。朝鮮征伐も負担が大きい。下巻が楽しみ。2016/05/13
とん大西
107
日和まくってちゃっかり勝ち馬に乗るなんて小賢しくてちょいといけすかない奴-藤堂高虎への印象がず~っとそんな感じでした。でも言い換えると先見性があって機を見るに敏。戦国を生き抜き優れた行政家となったんやからやはり魅力ある武将なんやろう…ということで本作にトライ(前置きが長くなりました)。この高虎、したたかながらかなりアオハルです。慕い続けた秀長の教えを貫き、故に家康と友誼を交わし天下の為に尽くそうとするあたりは浪花節です。不思議なものでだんだん高虎に肩入れするようになってきたょ。さて、下巻はいよいよ関ヶ原。2019/03/09
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
61
津藩主藤堂高虎の物語。地元の武将ではあるのだが、築城の名手という以外はこれまではあまり良い印象を持っていなかった。何故ならば生涯に主君を七度も変え、世渡り上手なイメージがあったからだ。だが、この人を主人公にした話を初めて読んで少し印象が変わりつつある。身の丈六尺を超える大男、武勇にも優れた人物である。前半は秀吉の弟小一郎秀長に使えている時代。彼にとってこの秀長という人物に出会えた事も大きいのだろう。それにしても、ここでも秀長は人格者であり、良き為政者として描かれている。さてさて、後半の高虎は如何に?2015/11/01
アイゼナハ@灯れ松明の火
35
藤堂高虎の話は火坂雅志『虎の城』で読んだことがあったので,重なる部分も多かったのですが,弟秀長の死後に大和郡山百万石を取り潰し,高虎を野に放ったのは秀吉晩年の痛恨事の一つに確実に数えられる気がします。そういえば高虎は近江の出身なのに,淀君が取り込みを図らなかったのは何でなんだろう?秀吉の死後に邪魔になる者たちを消して回る前に,シンパをもっと増やしておけばよかったのにね。上巻は秀吉没後,武断派七将による三成襲撃のあたりまで。下巻へ。2013/05/18
ううち
32
いただきもの。歴史に詳しくないので知らなかった藤堂高虎という方のお話。戦国時代に190㎝とはかなり目立っただろう。女性にちょっと奥手な所も含め高虎カッコいい。照葉と勝成の勝負のお話にはキュンときた。下巻へ。2017/06/05