内容説明
20世紀を通じて人間の知能指数<IQ>は上昇を続けている――
「フリン効果」の発見者が語る、現代人の知能の真実。
現代人の知能は向上しているのか?
東アジア人のIQはなぜ高いのか?
女子大生より男子大生のIQが高いのはなぜか?
老化によって衰えやすい知的能力とはなにか?
◆20世紀初頭からの100年間にわたって、知能指数――いわゆる「IQ」の平均値は大幅に上昇し続けている。
先進国を中心に世界中で見られるこの現象は、発見者の名をとって「フリン効果」と呼ばれる。
この現象は、現代人の頭がよくなったことを意味するのか。20世紀に起きた人間の社会や心理の変化とどうかかわっているのか。
「フリン効果」の発見者である著者が豊富なデータを用い、人間の知能のどの部分が、なぜ向上したのかを考察していく。
◆斎藤環「解説 私たちの「知性」は向上したか?」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ポレ
12
データの取捨選択や解釈しだいでどのような仮説も導けるという、社会科学の負の側面を体現した一冊。著者のフリン教授は人種間、男女間に遺伝的な知能の優劣は存在しないという。したがって全てのデータは、その思想に沿った解釈がなされ、知能は遺伝するという研究は牽強付会な理由により否定する。データとして扱う数値の裏には、そこに生活する生身の人間がいる。心理学者はなぜ彼らに思いを馳せないのかと、フリン教授はおおいに憤慨する。ひとりの人間としては正しいだろう。しかし研究者の姿勢としては疑問を感じざるを得ない。2018/11/30
Ryo
9
「人類の暴力史」の中で最も驚いた記述の一つに、人類のIQが10年で3向上していると言うものがあった。フリン効果と言われるその現象を発見したフリンさんの本。IQというのは偏差値のようなもので、115-85の間に68%、130-70の間に90%の人間が含まれ、70以下は知恵遅れに分類される。つまり、100年前の一般人は現代では知恵遅れとなる。しかし、これはあくまで化学的思考や抽象的思考の普及の賜物である。人は高IQを殊更に有難がるが、これは環境要因や能力需要に起因する部分が大きい。IQとは万能の尺度では無い。2019/08/17
やまやま
8
人間のIQの伸び要因として、論理を記号や抽象的な事柄に活用する場合が増えているという直接的な因子を挙げ、背景には、教育の普及や認知能力を要する仕事及び娯楽の増加、また少子化の影響といった中間的な因子が読み取れる。更に歴史的背景は産業革命とする階層構造を論じている。米国においては、死刑を宣告する判断基準の一つに、責任能力の有無ということでIQを利用している話は、恥ずかしながら知識がなかったので、正直驚く。加齢においても言語理解は向上するが、分析能力や処理速度はぐっと落ちていくことは何となく感じていた。2019/06/19
Francis
6
ニュージーランドの政治学者が人類の知能指数は上がり続けている、と言う仮説を検証した本。全体としてIQが上がっているのは間違いなさそうだが、なぜ上がっているのか、あるいは一見女性の方がIQが低く見えるのはなぜか、など各論になるとあいまいな結論になるのが歯がゆいところ。精神科医の斎藤環さんが解説で「知能は向上したが、知性は低下した」のではないか、とする問題提起をしているのも重要だと思う。2015/07/14
のぶ
5
難解な本でした。証拠や統計資料をもとに、「こういう考え方も可能だろう」という学術論文っぽい論調が続くのが一つの理由でしょう。もう一つは、IQという概念、「IQアップ術」的な本はよくあるし日常生活でも使う言葉なのに、実はけっこう曖昧なんですよね。そんな訳でフリン氏の議論をちゃんとは理解できないままの走り読みになりましたが、日本(「学力」を重視してるかな)以外の国ではIQへの注目度が高いらしいこととか、栄養とか衛生とかではなく社会的環境の変化が近年のIQ向上の世界的傾向の原因らしいことは理解できた気がします。2015/09/01