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内容説明
平田家に伝わる膨大な新資料の整理・研究成果を元に、現代にも通ずる日本独自の豊かな死生観を探究した、江戸後期を代表する思想家としての新たな篤胤像を描き出す意欲作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
52
この希代の国学者を「民衆」に引きつけて読み直している。もちろん皇国史観に繋がっていく日本の神々のあり方は見えてくるが、在野の学者として多くの弟子を得た理由が、この大衆性を踏まえた学であったのではなかろうか。著者は本書を著すにあたって、宮地正人氏の指導を仰いでおり、引用もある。『幕末維新変革史』の平田篤胤評に通じるのはそのためだろう。宮地が指摘している、おそらく篤胤はキリスト教についてもかなり的確な理解をしていたことが本書からもうかがえる。「狂信的国粋主義」という和辻哲郎の評価が一面に過ぎないと思った。2021/05/14
南北
47
平田篤胤は古事記などの古史や西洋から入ってきた科学知識などから「死後の世界」がこの世と地続きであるという世界観を構築した。死後の世界を意識し、日本人としてのアイデンティティを確立したいと考えていた。戦後は皇国史観の元祖であると考えられている平田篤胤だが、著者は平田家に伝わる未公開資料を整理・研究することで新たな平田篤胤像を提示しようとしている点は興味深く感じた。神々に見守られながら日々の暮らしを送るという世界観は当時の人々にも広く受け入れられた反面、批判も多かったようだ。従来とは異なる視点が得られる好著。2023/12/15
kenitirokikuti
11
図書館にて。2016年刊行。比較的新しい平田篤胤の略伝。著者の伯父は詩人の谷川雁だそうな。未公開の気吹舎資料を調査研究に携わり、現在同資料は国立民俗博物館に移されている。こうして略伝を読んでも、平田篤胤と気吹舎は大本とかああいう感じたなぁ、という印象はむしろ深まるのだった▲篤胤は生涯に3回結婚しており、2番目の妻とはすぐ離縁しているが、3番目の妻には、死別した最初の名前を名乗らせた、という愛妻エピソード?がややキモく感じた(織瀬という)2021/06/22
新父帰る
8
平田篤胤の生涯とその著書をコンパクトに紹介。平田は本居宣長の弟子を主張し、宣長の「古事記伝」に感銘する。そこから日本の神を鬼神と主張して「鬼神新論」を著す。更に「霊能真柱」(たまのはしら)において「世界の創生と日本の誕生」及び「死後の霊魂のゆくえ」を論じる。この書の影響で幕末維新期の思想的バックボーンを築いたと言われている。最後に大著「古史伝」を著し、記紀その他の伝承を再編するという、大きな意欲作で宣長の「古事記伝」に対抗。本書では平田の著書の文章を適宜引用しながら丁寧に解説してくれるところが気に入った。2018/08/17
mk
5
知識人層ではなく、町人や農民層に熱烈な支持者を獲得し、幕末維新の思想状況を準備した“草莽の国学”の創始者、平田篤胤の生涯を、独特の死生観に根ざした生活感覚の問題からあとづけたもの。戦後初期に貼られた「狂信的国家主義者」というレッテルを取り払い、篤胤の視野の広がりを時系列で確認していく手法は興味深かった。彼の著述活動を支えた幕臣屋代弘賢を筆頭に、この人抜きには語れないという周囲の人間関係を掘り起こしていく作業は、叙述に確かな手ざわりを与える。篤胤の「心」のイメージを解説した第7章も出色。2017/06/24