内容説明
精神の病態を一時的な疾患としてではなく人生全体の示す歴史的な歩みとして位置づけ、独自の思想を重ねてきた著者の代表的論考のかずかず。自己と他者の「あいだ」の病態として捉えられてきた分裂病を、「時間」の病態として、現象学的な思索を展開する。とりわけ鬱病者の“あとのまつり”的体制に対し、分裂病者が“前夜祭”的な時間体制をもつという新しい構図は世界的に大きな波紋を広げた。他者や世界との「あいだ」、自己自身との「あいだ」の歴史性における患者の生のあり方を追究した本書は、精神病理学と哲学を自由に横断する独創的な学問的達成であるといえよう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
水菜
7
予想以上に難解。ポストフェストゥム、アンテフェストゥムという考え方はなるほどと思った。統合失調症は投薬治療が第一ではあるけども、このような人間的な分析は、病と「共生」していくために役立つのではないかと思う。統合失調症の歴史を振り替えるという点では「分裂病の診断をめぐって」が面白かった。自分の勉強不足が痛感されてへこむ。2014/04/24
鴨長石
4
統合失調症や躁鬱病は、空間的・時間的な「あいだ」の機能不全に関する問題であるという。特に時間に関して、統合失調症では来るべき事態を予感的に先取りする「アンテ・フェストゥム(事前的)」、躁鬱病では完了した事態に手遅れを感じる「ポスト・フェストゥム(事後的)」の対比があると論じる。自分はこれらの疾患にかかったことがなく、また身近にもそのような人がいないので想像しかできないが、時間的認識や自己と非自己の「あいだ」、あるいは自己の形成の過程のあやふやさなど、何となく本書から感じたものを忘れないようにしたい。2021/07/03
金平糖
4
E。2017/11/17
kanaoka 57
3
難解な本であるが、これまでに同著の「自覚の精神病理」「時間と自己」を読んでいたこともあり、精神病理の専門的な部分を除いて、大枠は理解することができた。 自己の深淵を覗くことの怖さを感じるが、他方で自分自身の死(有限の生)を考えるうえで認識しておかなけばならないことと思う。死に面したとき未来という時間を失い、そのとき自己という存在も消滅するのだろうか・・・ 2015/07/03
淡嶺雲
2
わたしのことが書いてある気がする。これまで抱いて来た絶望感や違和感に名前が与えられた。2015/03/26