内容説明
自分は誰なのか?――それは生涯、終わることのない苦悶。伝えたいことは、平和への願い。戦争さえなければ、こんな人生は生まれなかったのだから――。戦後70年、人々の記憶から薄れつつある「中国残留孤児」。彼らの苦悩は2世、3世の時代になった今も続く。いまだに肉親を探し出すことができない……自分の本当の名前もわからない。本出身地も知らない。自分がどこの誰なのか知らない。中国にいたときは、「日本人」といじめられ、日本に帰ると「中国人」と言われる。自分はいったい誰なんですか? 居場所はどこにあるんですか……? 東京・御徒町の一角にある「中国残留孤児の家」。そこに集う中国帰国者とその家族たちの、波乱の人生。戦後70年間孤独を抱えながらも、たくましく、明るく生きる「帰国者」たち。日中関係の悪化を誰よりも憂い、もう二度と、自分たちのような人々を出してはいけないと心から願う。そんな愛すべき人々の人生を、丹念な取材を通して描く。「戦争」が生んだ傷跡の「いま」を抉るノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
makimakimasa
12
御徒町にある「中国残留孤児の家」、そのNPO理事長を務め、国家賠償集団訴訟原告番号1番でもある池田澄江はじめ、戦争に翻弄された孤児や二世達の人生と葛藤にフォーカスした三章までは一気に読ませる。それ以降はNPO主催のツアー同行や、他活動における人間模様の合間に孤児の人生を紹介するので、少し読みにくかった。しかし孤児と区別される残留婦人の運命にも焦点を当てたり、戦後70年という区切りで彼等の今を描いたのは意義がある。特に身元未判明孤児の孤独を思うと胸が痛い。満州逃避行における子殺しと女の提供の話も強烈だった。2024/11/24
itokake
11
1000人を超える中国残留孤児の写真集『私は誰ですか』を見て、彼らのその後が気になった。著者は2世が起こしたバス事件を調べる中で、中国帰国者と関わるようになった。中国で日本鬼子といじめられた人もいれば、いじめと無縁で成長した人もいる。日本に戻ったのはなぜかと問われると、日本は自分の国だからと答える。中国でしっかりした生活基盤があったのに、祖国に帰りたい一心ですべてを捨ててきた。だが2世になるとはっきりと温度差がある。帰ってきた1世たちも行動様式は中国のまま。郷に入れば、という意識はないことが多い。2025/04/15
勝浩1958
11
中国残留孤児に関する本を読むと、どうしてもテレビドラマ『大地の子』を想いだしてしまいました。戦争によってかけがえのない親を兄弟姉妹を祖国を失い、そして過ぎ去った時間は二度と戻ってこない。2015/11/30
お萩
5
仕方がないと諦めることだけが救いになる、それって、なんて苛酷な状況だろう。書かれていることですら私の想像は現実に塵ほども及んでいないだろうと思う。「恥」の意識についてもだけれど、思い出すのも苦しいことが語られ、こうして手を伸ばせば知ることのできる意味をもっと考えたい。無知ではいけない。2016/06/23
Lilas
4
先に『ソ連兵へ差し出された娘たち』を読んで圧倒されたので、こちらも読んでみました。『ソ連兵へ〜』の前編とも言える内容で、こちらも力作。ただ自分が子どもの頃テレビで中国残留孤児の肉親探しのニュースを見て背景を知らず反発を覚えたこともあったので、申し訳ない気持ちでいっぱい。悲しくて涙が出た。 この著者はジェンダー的視点、そして時に自身の感情を明確にあらわすところが特長と感じたが、その按配が良く、大変読みやすかった。2022/04/04
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