岩波新書<br> 憲法と政治

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岩波新書
憲法と政治

  • 著者名:青井未帆
  • 価格 ¥924(本体¥840)
  • 岩波書店(2016/08発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004316060

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内容説明

私たちは「政治が憲法を強引に乗り越える」さまを目撃した――.安保・外交政策の転換,さらには「改憲機運」の醸成がどのように進められてきたかをていねいに検証し,国会・内閣法制局・裁判所の責務にも言及.立憲主義にたった法の論理を鍛え,平和の問題を権力の適切な統制と結びつけて考える必要を訴える,熱い警世の書.

目次

目  次

 第一章 私たちは何を目撃したのだろう
    「改憲機運」の醸成/舵が切られている/自民党への政権交代後に/内閣法制局長官人事/安保法制懇報告書と安倍首相の会見/七月一日閣議決定/成立した安保法制/ 「憲法守れ!」と「でも必要でしょ?」/国家・家族・個人と一体となった「国がら」/ 「道理」と近代立憲主義/私たちの社会の中での「個人の自由」
 第二章 憲法九条と安保・外交政策
   国際法における到達点/実力の統制/支えてきたもの/論理による統制/自衛隊をめぐる特殊性/何ができるか──ルールと例外/ 「例外として許される武力行使がある」/個別的自衛権と集団的自衛権の関係/ 「武力の行使に当たらないからできる」/転換──二〇一四年七月一日閣議決定/ 「我が国の存立」/昭和四七年見解/砂川事件/国民の生命、自由及び幸福追求の権利
 第三章 限界に達している
    「国連平和維持活動」(国連PKO)/武力行使一体化論/武器等防護/米軍とセルフ・ディフェンス/憲法論と国際法論/ 「政府が判断する」?/国家と誠実さ/条約改定手続きなしに変わってきたこと/ガイドラインとは何なのか/ガイドラインの経過と「日米同盟」の変質/ 「トモダチ作戦」/米軍再編/同盟調整メカニズム/自治体や民間の「能力活用」/特定秘密保護法/ 「日米同盟の深化」と特定秘密保護法/ 「国際約束に関する規定」をめぐって/特定秘密保護法の目的/統合幕僚監部の内部文書/文民統制/文民統制をめぐる政府解釈
 第四章 平和と想像力、武器と紛争
    「人間の破壊力」と政府の行為/ 「聞け野人の声」/女性・平等・戦争/武器・ビジネス・紛争/大きく変化する武器輸出/禁輸政策を振り返る──三原則の意味/政策の転換へ/ 「国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念」/禁輸政策がもたらしたこと/ 「武器輸出三原則」を再確認するために
 第五章 国会の責務
   国会の軽視/二〇一五年夏の強行採決/政治と議院の自律/政治過程と法/国会の威信の回復と「他律」
 第六章 憲法解釈と裁判所
   やってはいけないことだった/内閣法制局と「解釈の一義的確定性」/二〇一五年の事態とその検証/違憲審査と憲法判断/憲法訴訟とはなにか/立法行為と国家賠償請求訴訟/安保法制違憲訴訟/砂川事件最高裁判決/政治と裁判所と市民
   おわりに
   あきらめない/沖縄
   あとがき
   参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ゆう。

26
題名にあるように、憲法で今日の安倍政治を縛ることの必要性を問う内容となっています。そして、市民の視点からの憲法論となっていると思いました。安倍政治は集団的自衛権を認め、戦争法を制定し、立憲主義を顧みない政治に終始しています。そして、衆参で改憲勢力が三分の二を超える状況ともなっています。そうしたなかで憲法の視点に立ち、私たちの権利・人権を考えることは重要な意味を持つでしょう。こうした情勢下、この本のもつ意義は大きいと思いました。2016/08/04

coolflat

18
集団的自衛権の解釈改憲の重大なポイントは、内閣法制局の長官人事にあったという著者の指摘はもっともだ。それまで内閣法制局内部で人事が行われてきたが、安倍内閣は慣例を無視し、駐仏大使である小松一郎を長官に据えた。前提として、それまでの国会は内閣提出法案に対し、憲法に適合しているか突っ込んだ議論をする事もせず、また最高裁も内閣法制局の事前審査を重視するあまり違憲判決を出さなかった、という指摘は本質を突いている。国会や裁判所が内閣法制局という権威を重視しすぎた挙句、反動政権に逆にそこを突かれ利用されたという訳だ。2016/09/24

skunk_c

17
憲法学者が、この2年ほどの間に起こった政府の解釈改憲と安保法制について丹念に解説している。印象的だったのは現実の自衛隊とアメリカ軍の連携(いわゆるガイドライン)や、自衛隊制服組のポジションの向上が憲法9条から見て限界に達していること、同時に武器輸出三原則の撤廃など、9条による箍が外れつつあることだ。安倍政権の憲法13条や砂川訴訟判決を盾にした「積極的平和主義」のまやかしにも触れる。その中で、理念としての国家を護ることより、生身の人間が戦争により傷つき命を落とすことへの思いを忘れるなとの指摘に共感を覚えた。2016/07/06

RmB

14
憲法で政治を縛られたくない人々が改憲を望んでいるのだと思います。その人たちは、いつも財布の中身の話をしています。2016/08/01

sonettch

11
やっと読み終えることができた…。というのがまずは正直な感想。ふだん読まないような難解な文章でしたが、読み進めるうちに少しずつは慣れてきました。例えば、「日本国憲法は、国家の実力に関係する安保・外交政策を、不可避に憲法問題とすることで、政治の不自由を作り出し、それにより憲法的な限界を設けている。」(p.46)というような文章。一回読んだだけではすんなり入ってこない、何回か読まないと理解できない難解な文章なのです。そんな感じで読み進めたので、時間がかかりましたが、これが熟読ということなのでしょうか。2016/08/14

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