内容説明
《鐶(わ)の星》の巨大なビルディングで生きるアナナスとイーイー。父と母が住む碧い惑星への帰還を夢み、出口を求めて迷路をひた走る二人に、脱出の道はあるのか?……SF巨篇を一冊で待望の復刊!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
43
星と少年の物語が読みたくて。とある星、林立する超高層ビルの中。少年アナナスは遠い碧い星への憧れを募らせ、そこにいるというママやパパ宛の手紙を綴るが、同室のイーイーはどこか冷ややかで。長野さんらしい透明感のある世界、でもここは、命の気配がない無機質なディストピア。少年たちは何者か。何のためにここにいるのか。700ページに及ぶ物語の中で、結局詳細が明らかにされることはなく、モヤモヤ感が。結末は多分別れと旅立ち。意図をもって作られた人工物だとしても、冒険心に溢れ別の世界を夢見る彼らは、まぶしく、とことん少年だ。2024/06/27
橘
27
復刊で再読しました。この不思議で寂しい感じが好きです。わからないことはたくさんありますが、全部理解できる、というのも味気ないので、この世界観はたまらなく良いです。「誰かをキラうというのは、同時に自分の一部を失くすことでもある」という一文が心にひっかかりました。アナナスとイーイー、二人の間に交わされるやりとりが切ないです。一冊になって分厚かったですが、今回も引き込まれました。2016/08/26
❁Lei❁
20
なんて静謐で、ロマンチックで、いじらしいSFでしょう。〈鐶(わ)の星〉の巨大ビルディングに生きる少年・アナナスとイーイー。彼らはテレヴィジョンに映る碧の惑星にあこがれ、そこに住むママとパパに逢うために、夏休みにロケットでの帰還を試みます。すべてが作りものめいた、無機質でモノクロな世界。しかし、アナナスの瞼の裏に映る海の光景は鮮やかで、どこか懐かしいのです。都市のビル群の中に暮らす私は、水と緑の残る故郷を想いながら読みました。私とアナナスの淋しさは、きっとこれから何度も《クロス》するのだと思います。2025/03/19
myc0
18
1000冊目は、この本の再読と前から決めていた。ママダリアが棲む青い星からはるかに離れたどこかの星で、テレビジョンに囲まれながら暮らすアナナスとイーイー。序盤から不気味な気配が漂い、ひやりとする。光、雨、宇宙…この作品の世界観は、先日行った「チームラボ」に似ている!17年ぶりの再読で、高校生の時と同じようにこの作品に感動できる自分にも安心した。言葉は死んでも文字は残る、その言葉がずっと支えになっている。2023/03/05
ぱどり
16
再読に次ぐ再読。完全には理解できないこのSF、それでも引き込まれるのは切ない物語と中二心をくすぐられる登場人物の描写。特にイーイー!ショッキングピンクに一部染められた髪の毛、真似したい…と思ったまま出来ずに三十路。2019/10/06