内容説明
唯一の戦争被爆国である日本。戦後、米国の「核の傘」の下にありながら、一貫して「軍事利用」には批判的だ。だが原子力発電を始めとする「平和利用」についてはイデオロギーと関わりなく広範な支持を得てきた。東日本大震災後もなお支持は強い。それはなぜか――。本書は、報道、世論、知識人、さらにはマンガ、映画などのポピュラー文化に注目、戦後日本人の核エネルギーへの嫌悪と歓迎に揺れる複雑な意識と、その軌跡を追う。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
32
メディアの報道や知識人の言説、世論調査、大衆文化を通して戦後日本における核の認識の変容を辿る作業を試みた一冊(ⅳ頁)。’50年代は原子力の平和利用の意識が社会に浸透していたという(38頁)。読売新聞が加担していた(41頁)。大江健三郎と岡本太郎の感性を大事にしなけれ ばならないと思う(76頁~)。マンガや文化人を通じて戦後の放射能にどう向き合ったのか、追跡するのは鶴見俊輔的手法かもしれない。電源三法は原発依存症を作り出した(159頁)悪しき法制。2015/06/18
リキヨシオ
23
唯一の被爆国で核兵器の「核の軍事利用」を否定しながらも、原発など「核の平和利用」を推進してきた日本人の核への考え方が新聞や映画や漫画などを通して把握できる作品。戦後のアメリカ占領が終結するまでは原爆は平和の礎というイメージがあった。ビキニ事件、スリーマイルやチェルノブイリ原発事故が発生して一時的に核の危険性は議論されるが核の平和利用が強かった原発事故があったからこそ、当時の日本人の核への考え方は興味深いけど複雑な気持ちになる。「原子双六」「水素ばくちゃん」「笑いの放射能」という作品が実際あったのが驚いた!2015/11/17
ミツ
17
戦後の日本が核をどのように捉え、取り扱ってきたかをその時代ごとの政治や世論、報道や運動更には映画やマンガ、音楽や文学作品などの文化的な視点も交えて説明する。核・原子力から見る戦後日本史概説として読むこともでき、唯一の被爆国としての日本が、軍事利用と平和利用、核武装と核廃絶、核の傘と安全神話の安定した対立構造の中で変遷してゆく様が分かりやすく整理されている。夢と希望の象徴であると共に世界の破滅をもたらす恐怖と災厄の象徴としての核を恐れ、愉しむという精神の二面性が、しかしどうしようもなく哀しく思えてしまった。2016/09/18
なっく
15
我々日本人は原子力と相性が悪いとつくづく思う。二発も原爆を落とされ、多くの同胞を失ったにもかかわらず、アトムやゴジラなどで身近な文化として親しみ、資源の無い国のエネルギー救世主としての原発、勤勉で技術のある日本人ならばとの期待も大震災でもろくも崩れてしまう。もはやこれは相性を嘆いている場合ではないことを痛感した。ステレオタイプな日本人だが、改めてみんなで議論していく必要がある。多くの方に読んでもらいたい。2016/04/15
ネムル
13
報道、世論、またはマンガや映画などのポップカルチャーを通して、日本人の核に対するイメージの変遷を追っている。それは日本が唯一の被爆国(清水幾太郎はこれを特権と称している。)だからこそ核を軍事利用するか平和利用するか、原発を推進するか反対するか、終末論としてのイメージに恐れを抱くか強大な力として記号化されたマンガや映画を楽しむか、核に対する様々な二面性の歴史でもある。そして広島長崎に加え、スリーマイル島やチェルノブイリの事故を経てなお、世論では原発推進派のが反対派より多かったというのだが、2018/03/20
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