内容説明
学徒出陣、基地での激務と空襲、マリアナ沖大海戦、父や恩師、そして恋人を奪った広島の原爆の惨状……。第二次大戦に遭遇した一人の青年の友情と恋愛、師弟愛と肉親愛とを、入念な筆で情趣ゆたかに描いた著者の処女長篇。激動の時代と生きながらなお、溌剌たる若い生命の感受性、健康で素直な生活感情と故国への愛、掛替えなき青春という時の、一つの姿を浮彫りにする。読売文学賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
33
海軍予備士官たちの話です。徐々に戦況が悪化していく中それぞれの立場がよく伝わる話であり面白いですが、主人公が好きになれないタイプでした。著者の陸軍嫌いがところどころであらわれるのに少し笑えます。2022/11/24
slowlifer
27
海軍予備学生として海軍に入隊という学徒兵体験に基づいた記述のために感じるリアル感。制約が多い中での恋愛、文学や医学を志向する学生、通信傍受による諜報活動、兵舎での堕落など、野火のように戦場の惨劇そのものではなく、視点をずらして主に暮らしや軍務の断片を描くことで、戦争の理不尽さや狂気が浮かび上がる。原爆後の人々や街並みの描写に胸が一杯になった。つい70年前の出来事。人間は滅亡するまで愚かさに気づくことはないのか?焼き尽くされ死体が散乱する戦場と優雅に奏でられたのどかな雅楽とのギャップに究極の無常を感じる。2016/08/12
ちゃま坊
18
太平洋戦争が時代背景の青春小説。学業優秀で通信諜報や医学に関わる者はまだ恵まれている。戦況は日々に悪化。広島原爆の情景が地獄絵図だ。目黒駅辺りを歩くと海軍大学校のことを思う。2021/02/26
ウィズ
14
戦争を経験した阿川先生だからもの凄いリアリティーがありました。戦争反対!!2016/05/19
せいたろう
13
戦時下の青春。「井上成美」、「米内光政」が面白かったので手にとってみました。阿川弘之氏の自伝的小説。原爆の記述は何度聞かされても痛ましい。子供の頃、恐怖で髪の毛が逆立った人がいたと聞いた時は半信半疑だったが今となってはそういうこともあったのだろうと思えるようになった。戦争体験者は怒りのぶつけようがない。2021/01/29