内容説明
「犯罪」とは――。都市の空虚なビル、そのコンクリートの壁の上に、簡単な1本の線で描かれる「人間」の形である。少年による「理由なき殺人」の嚆矢、小松川女高生殺人事件。犯人の少年の獄中書簡に強く心を衝たれた著者は、動機の周りを低回する世間の言説に抗し、爆発的な自己表現を求めた内部の「私」の犯罪であるとする文学の言葉を屹立させた。他、永山則夫、金嬉老など、犯罪を論じた評論17篇を精選。
目次
内部の人間の犯罪
殺人考
金嬉老の犯罪
現実は要求する、さらに深く問え
犯罪と文学
犯罪の形而上学
都市の犯罪
「犯罪」への意思
「犯罪」について
スキャンダルと犯罪の繁栄
生を螺旋形に変えよ!
自己発見としての犯行
永山則夫と私
永山則夫への懐疑
余談・閑談
『山の人生』へ一言
少年の理由なき殺人と文学
著者から読者へ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
152
理由ナキ殺人といわれる小松川女高生殺しで犯人とされた少年は、内部の人間…即ち私とは何かという問いを抱え、外界を内的ドラマに変換して生きる人間だということ。ラスコーリニコフ、イッポリートなど小説の中にも少年と同じような人間がいた。ここにある眩暈に似た感覚は、現実の犯罪を虚構と重ねて考えていくせいかも知れないし、少年の身に起きたことを私自身のことのように感じるせいかも知れない。少年は犯行の時間を夢のようだと述懐するが、それはただ、内部の人間である少年の〝私〟に必要だから為されたのだという…夢を見るような犯罪。2026/03/26
マヌヌ2号
3
とはいえやはり人を殺してはいけないし自殺をしてはいけないと思うのですよね。全体的に、社会を斜目に見ながら、らしさを貫き生き続けた『簡単な生活者の意見』のほうがより飲み込めたなぁ、殺人者に肩入れしすぎてはいないか。……ということを思いながら読んだので、いちばん印象的な項は「殺人考」でした。かなり厳しく、舌鋒鋭かったので。「内部の人間の犯罪」もまぁ興味深くはある。傷つくのが怖くて自己を疎外し、偽りの自己を空想する。自分を大事にせず虚飾すると、他者を大事にしようとする感情が育つ余地もなくなる、ってこったな2026/05/05
AR読書記録
2
あまり時を置かずに再読してみたけれど、やっぱりまだ飲み込めない... 著者が(主な)問題としている部分とは違うが気になったのは、戦時中には(兵士としてあるいは銃後の守りとして等、役割を与えられ必要とされてい る実感があるときは)自殺率が下がるものだが、昭和33年をピークに下がるのは、自分を殺すのでなく他人を殺すほうに向かったからだ(か?)、というところや、四半世紀前にすでに、中流意識は政府と新聞とテレビの意識操作の産物で、それまで生きてきた圏内から出られない社会の体制が定まっている、と言ってることとか。2014/06/01
AR読書記録
2
うむ... 一度目では咀嚼しきれず。理解しがたい犯罪について、安易に“理由なき犯罪”とのレッテルを貼って思考停止するのでもなく、あるいは理解しやすい動機、ストーリーに無理に当てはめて安心するのでもなく、人間の内奥の、なにかひとがまだ言葉には表せてはいない部分、周囲によってもあるいは自分がなにかを見つけていれば殺人などとは全く違った方向にも行く可能性のあったものについて、文学はそれを追求すべきでありそこに追求され言葉にされ理解されるべきなにかがある、みたいなことを真摯に語りつづける本、って感じ? 再読する。2014/05/26
JunTHR
1
neoneoの連載「記録文学論」きっかけで読んだが、慣れない文学的な評論に苦労しつつも、非常に興味深く読み終える。小松川事件をほとんど知らなかったので、秋山駿が何十年にも渡ってこだわって書き続けたこの事件、気になるので詳細を調べよう。そしてコリン・ウィルソン『殺人ケースブック』に続き、やっぱり出てくるドストエフスキーとカミュ『異邦人』の名に、これはいよいよちゃんと読まねばなぁ。この「内部の人間」という概念がまず理解しづらかったのだけど、読み進めるうちに徐々に腑に落ちてきた。また解説も助けになる。2014/10/10
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