創元SF文庫<br> ハイ・ライズ

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創元SF文庫
ハイ・ライズ

  • ISBN:9784488629151

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内容説明

【映画化原作】ロンドン中心部に聳え立つ、知的専門職の人々が暮らす、新築の40階建の巨大住宅。1000戸2000人を擁し、マーケット、プール、ジム、レストランから、銀行、小学校までを備えたこの一個の世界は事実上、10階までの下層部、35階までの中層部、その上の最上部に階層化されていた。その全室が入居済みとなり、ある夜起こった停電をきっかけに、建物全体を不穏な空気が支配しはじめた。3カ月にわたる異常状況を、中層部の医師、下層部のテレビ・プロデューサー、最上層の40階に住むこのマンションの設計者が交互に語る。バラード中期の傑作。/解説=渡邊利道

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

327
J・G・バラード中期の代表作の一つのようだが、SFではない。ロンドン中心部に建てられた40階建ての高層アパートの住民たちを描くのだが、たしかに架空の情景であり装置なのだが、そうした状況に人間(この場合、ほとんどは高学歴、高収入の人たち)を置いてみるといった、ある種の実験めいた小説である。ただ、1975年の作品にしては、40階建てがとんでもなく高層ビルのように描かれているところが不思議だ。また、居住階によって生じるヒエラルキー(上層階ほどヒエラルキーも高い)というのも、そうなのだろうかという思いが残る。2024/08/22

藤月はな(灯れ松明の火)

99
再読。社会から切り離されても完全に生活できるように管理された高層マンション。もし、そこで人間が社会的に暮らせない程の不具合が起きたら?「出ていく」というのは簡単だ。問題は、人は自分がある程度の労力、費用、時などのコストを掛けたモノ程、失いたくないという事だ。失いたくないなら環境に適応する方が簡単だ。それは悍ましいかもしれない。でも停電前のスカシているが爆発寸前な環境より、混沌としているが統制が利いた野生性に安らぎを覚えてしまう。最も、ラストでラングがアリスやエリーをモルヒネ漬けにさせてるのはどうかと思うが2019/05/16

HANA

70
今までバラードは「クラッシュ」や「殺す」くらいしか読んだ事はなかったのであるが、本書もその系譜に連なる一冊。一つの出来事が切っ掛けとなって物事がどんどん悪い方向に転がっていく話はよくあるけれども、これはそれだけに留まらずむしろ形而上学的な方まで話が膨らんでいくように思えるなあ。粗筋読んだ時は階級社会に対するアンチテーゼかと思ったけど、それも一時だけでそういうものはすぐに超越しちゃってるし。何となく神話じみた最後といい、社会問題だけではない人間の業的な何かを指示された気もする。いや、非常に面白かった。2016/08/25

藤月はな(灯れ松明の火)

64
どこを探しても見つからなかった幻の絶版が、トム・ヒドルストン氏主演の映画化を機に復刊。住民が高給取りのインテリのみで選別され、全てが揃い、完結しているが、他の社会から孤立している高層住宅。だが停電を機に密かな階級制度に苛立つ人々の心は「野蛮」に帰っていく・・・。この作品は無菌状態の高級住宅地で起きた殺戮と児童失踪の真相を描いた『殺す』の原型とも言えるだろう。最後に犬を中庭から解放したアンソニーに私はどうしても苛立ちを覚えてしまう。創造主故の傲慢さと全ての創造物が性善説と理性で動くという軽率さが透けて見える2016/07/18

こばまり

61
本能に突き動かされあれよあれよと荒んでいく群衆に何故かうっとり。この混沌にそっと身を委ねてみたくなる。果たしてこれはイケナイ欲求か。2016/08/02

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