内容説明
「農村の生活は、何もかも珍しく、どこから手をつけていいか、はじめのうちは見当もつかなかった」――。本書は、名随筆家・当代一の目利きとして今なお多くのファンを持つ著者が、30年余り前に綴った知性と感性が光る珠玉の随筆集の復刻版である。第二次世界大戦が始まると同時に移った往時の町田市鶴川に今も残る藁葺き屋根の農家「武相荘」。そこでの幸福な日々やそこを訪れる人々との交流を描いた「鶴川日記」。山の手育ちの著者が、永田町・麹町・赤坂・麻布など憶い出に残る坂を再訪し、その場所にまつわるエピソードや現在の姿を綴った「東京の坂道」。長い人生の中で出逢った梅原龍三郎・熊谷守一・芹沢銈介・荒川豊蔵ら文化人との心に残るエピソードや、祖父母など肉親と過ごした日々をまとめた「心に残る人々」の3篇を収録する。何気ない日常に温かな目を向け、人々との交流や毎日を丁寧に生きることの大切さ、本物の豊かさとは何かを思い出させてくれる一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
宵待草
92
昨日は、コロナ禍以前に来館以来、久し振りに好きな『武相荘』を訪ねました。 今回の来館目的の一つには、正子さん愛用の、夏の展示品『和ガラス』を鑑賞する事も在りました。 私は美術工芸品の中でも、明治・大正・昭和初期の、職人手作りの和ガラスを最も愛して来ました。 正子さんの愛用の和ガラスは、やはり逸品ばかりです。 此の『鶴川日記』には、白洲次郎:白洲正子さん御夫妻が、茅葺き屋根の鶴川の家での事を読売新聞の『自伝抄』に連載した随筆です。 加えてミセスに連載の『東京の坂道』と訪問記の様な 、、、コメントへ続く 2023/07/30
フリージア
49
白洲正子氏の二冊目。鶴川に白洲次郎が住んでいたと知り、その住まいの武相荘まで出掛けたことがあったので読んでみた。鶴川日記の章では、田舎が好きな正子氏が終の棲家を鶴川に見つけてから慌てて引っ越した戦争中の話、当時の近所の様子など。東京の坂道の章では、正子氏の育った頃の赤坂周辺の懐かしい思い出。心に残る人々の章では、交流のあった文化人や薩摩藩士だった祖父樺山資紀さんの事が書かれていた。飾らず正直な気持ちで登場する人物を暖かく描く文章が心地よかった。2021/04/29
マエダ
49
白州正子さんを知るために読了。2019/03/27
kana
46
白洲夫妻の終の住処である武相荘の見学に行く前の予習に。生活への気配り同様に、華美になることなく、行き届いた端正な日本語表現が素晴らしくてうっとりしちゃう。武相荘に関するエッセイは冒頭から1/3でしたが、日々の暮らしへの愛おしさに満ち満ちていて、日本の戦後外交の未来を背負って立つ次郎さん、変わらない日本の美の在り方を追い求めた正子さんの心の拠り所としてこの場所が大切だったことがしみじみと伝わります。東京の坂道や出逢った人々との徒然を綴った残り2/3も芸術や歴史への着想に富み、線を引きたい言葉がたくさん。2020/03/05
kawa
32
直前読了の「風の男 白洲次郎」がとても刺激的だったので、次は氏の奥様である白洲正子さんのエッセイ集を手に取る。「鶴川日記」「東京の坂道」「心に残る人々」の3部構成。「日記」は戦中に移住した鶴川・武相荘(ぶあいそう)での日々を綴る。ここでの話題が「風の男」でも引用されている印象。「坂道」は著者の生まれて永田町等の周辺の坂道を幼少の思い出とともに綴る。都心部の坂の多さをグーグル地図とともに楽しみながらの読書。「心に」は著者と交流のあった画家や作陶家についてのエッセイ。私的にはマニアック過ぎ読者を選ぶ内容かも。2023/07/17
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