内容説明
念願かなって町の小さな調律事務所に就職が決まった幹太は、業界内で「エスピー調律師」と揶揄される時子の助手として働くことに。シンプルな黒スーツに鋭い目つき、無愛想な態度――時子の醸し出すエスピーのような雰囲気に最初は尻込んでいた幹太だが、彼女の天才的な手腕と真摯な仕事ぶりに尊敬の念を抱き始める。依頼人たちが望むさまざまな「音」を作り上げるために奮闘し、ときにピアノと音に隠された謎を解き明かしてゆく時子たち。そして調律が終わり、ピアノに神さまがおりた瞬間、それぞれの依頼人の心に小さな奇跡が訪れる――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
papako
63
これは楽しかった。女性ピアノ調律師の時子さん。ピアノを調律しながらピアニストまで助けてしまう。後輩の新人ワン太がやってきて、彼女は過去とも向き合い、調律師として生きていく覚悟を決める。時子さんの過去は辛いもの。それでもピアノから逃げないなんて。でもタイトルの『神様は五線譜の隙間に』違いますよね?ワン太や時子さんたちのピアノの音の表現が素敵でした。ちょっとピアノ聴いてみたくなりました。2022/02/22
b☆h
48
ピアニストを目指していた少女が、怪我を理由に調律師になり、音と過去の自分に向き合う物語。音を〝せせらぎ〟〝虹〟など抽象的に表しているが、不思議と目の前に映像が浮かび上がる。調律を通じて、依頼人の抱える悩みを解決するきっかけを示す姿も描かれ、胸が熱くなった。『どんなに辛くても、どんなに悲しくても、どんなに上手くいかなくても、音楽と向き合えない人間に音楽と関わって生きる資格はないのだ。』向き合うことは、大切にすることにも繋がり、そのまま人にも通じる言葉だと感じた。自分とも人とも向き合えるよう在りたいと思う。2022/10/04
たるき( ´ ▽ ` )ノ
45
素晴らしい。最近読んだ本の中で1番好き!今年のランキング入り決定ヽ(´▽`)/すごいな、こんなふうに調律されたピアノに触れてみたい。何年か習っていた程度だけど、ピアノには思い入れがある。調律の段階でこんなに愛を感じられるピアノ、弾いたらものすごく気持ちいいだろうな。2020/05/09
佐島楓
43
もう一度、埃をかぶっているうちのピアノに触ってみたい。素直にそう思わせてくれたこの作品と作者さんに、ありがとう。2016/08/20
kei302
39
表紙イラストから感じたイメージを裏切らない、読みやすくて、希望に満ちた作品。調律や曲、作曲家などの解説が硬いのが難と言えば難で飛ばし読み。調律師の時子、新人の幹太、調律の注文主たちとピアノ。それぞれに物語や秘密があって、読み応えがあった。感じ方や感覚という捉え難いものと向き合う仕事を通して共に成長する姿がいい。2020/05/12