内容説明
現在の私たちは、「男性は仕事、女性は家庭」という近代以降に形作られた性別分業体制を脱し、「共働き社会」に移行しつつある。しかし、この共働き社会では、結婚しない(できない)人の増加、子どもを作る人の減少といった、「家族からの撤退」をも生じさせた。「家」の成立過程と歩みを振り返りながら、雇用、家事、世帯所得格差といった現代の諸問題を社会学の視点で分析し、〈結婚と家族のみらいのかたち〉について考察する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
breguet4194q
98
しっかりした学術書です。社会学の範疇になると思いますが、時代状況を背景に、家族のあり方、考え方の変遷を丁寧に説明してくれてます。ボンヤリそうだよなと思う事も、しっかりエビデンスを示して、論理的に持論を展開。説得力があると思います。面白かったです。2021/11/11
とよぽん
57
2016年発行だから8年前の書籍だ。でも、今も十分当てはまる。筆者は家族社会学、計量社会学の視点でとらえた現代の結婚と家族を論じている。サブタイトルの「共働き社会の限界」に興味をもった。家父長制や経済成長など、家族のあり方の変遷をたどりながら、男女ともに働く世帯にとって、家庭は共同経営の職場のような安らぎのないものに変わってしまったと。これはうなずける。さらに、税制が結婚や子育てにかなり重要な影響を持つことを指摘した部分に、目からウロコの思いがした。あとがきに書かれた結論に、納得。2024/08/27
おかむら
40
結婚や家族のかたちの変遷。古代はあんがい自由奔放、その後男性中心の「家」制度を経て、いまは共稼ぎ社会へ。共稼ぎでもまだ男が上の価値観が根強く残ってる感。家事育児介護を主に担当しつつフルタイムで一生働くって女はハードすぎるわ。サラリーマンと専業主婦という私らの世代ではまあまあ多数派だった家族のかたちは、本当に恵まれてたんだなー、とラッキーな時代に生まれて良かったわ。子どもらからは恨まれそう? 著者は家族社会学の学者さん。語り口調なので読みやすい。2017/05/22
katoyann
23
共働き社会の結婚について、社会学の分析を提示した本。結婚には、階層が似通ったカップルが結ばれるという同類婚の傾向が見られる。それゆえ、共働き社会では、年収の近いもの同士の結婚が増えていく。その結果、かえって世帯収入の格差が拡大していく。性別分業家族には戻らないという前提ではあるが、結婚が格差を拡大する社会は公平な社会とは呼び難い。恋愛は階層や社会規範を飛び越える要素も含まれる。階層の異なる男女のカップルが増える方が、それも女性の年収が上になるカップルが増える方が、社会として多様性が生まれるとする。面白い。2022/09/24
阿呆った(旧・ことうら)
22
◆フルタイムの共働き夫婦でも、妻の家事労働は平均・週10時間長い。理由は『妻が家庭の責任者としてのアイデンティティを維持したいため、夫の家事の参入を認めない場合』と『低収入の夫自身が、家事をしないことで、男性の権威を表現する場合』がある。後者は何とも情けない。◆同類婚(年齢、学歴、所得階層、民族、宗教などが同じ)が多い社会では『共働き自体が格差を生み出している』◆一口に、女性が働きに出れば良いかと言えばそうでもない一方で、人口減少を考えると女性も労働に出ないと社会が維持できないと言う様々な問題があります。2017/03/02