内容説明
千三百余年の歴史を超えてよみがえる、万葉のロマン。――〈万葉のこころ〉を愛し求め続ける著者が、読者をおおらかな古代人の世界へと誘う。万葉の歌を《愛》《旅》《四季》という角度から捉えた本書は、全国の万葉故地をくまなく訪れた著者ならではの語りかけで、風土のなかに生まれ、息づいた歌ごころを、もっとも古くて、もっとも新鮮な生のいぶきとして伝える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
117
素晴らしい本だった。犬養孝氏の優しい語り口で、万葉集の歌の数々が染み入るように、心の中に入ってくる。他の本で知った歌もこの著者を通して、新しい光を当てられたような気がした。作者は『万葉集』の有名な研究者だ。万葉集の歌の優しさとおおらかに強く惹きつけられたのだろう。それは私も同じだ。旅のことを書いた二章が一番好きだった。万葉の時代は旅は命がけだった。そのために出会いと別れ、旅先で見る風景がかけがいのないものになり、数々の名歌が詠まれた。「玉津島見れども飽かずいかにして包み持ち行かむ見ぬ人のため」2018/08/07
双海(ふたみ)
22
今一度、万葉集を読み直さないといけないな、と思いました。こういう歌集が残っているということは有難いことですね。2015/03/04
Kawai Hideki
19
先日他界した祖母の遺品として棺に入れた本。私自身も奈良に10年以上住み、博士論文で万葉集の歌を引用した縁もあり、図書館で借りてみた。本書は万葉集学者のラジオ番組での話書き起こし。歌が読まれた時代、地理、政治、民俗的背景を丁寧に紐解いてくれるので、現代に生きる我々にも当時の人の心がありありと伝わってくる。特に序文と最初の「物についたこころ」は名文だと思う。ただの石でも愛する人が踏めば宝石になるという万葉集の歌と、太平洋戦争で戦死した息子が踏んだかもしれない石を大事に包んで持ち帰るおじいさんの対比が胸に迫る。2014/03/14
双海(ふたみ)
18
名著。ご存知の通り、万葉集には恋の歌が非常に多い。しかし、一首たりとて今日の流行歌のような「好き」「愛してる」といった観念的な言葉は出てこない。そのかわりに、きわめて具象的に愛情を表現している。たとえば、「ありつつも君をば待たむ うちなびく わが黒髪に霜のおくまで」という風に。「好きだから待っている」とは言わずに、「霜のおくまで待っている」という。後者の方が私たちの実感に訴えてくるものがある。複雑な観念で頭をいっぱいにした現代人からすると、万葉の恋歌はすがすがしい情熱で、生き生きとしているように見える。2018/03/14
かふ
17
この本は『万葉集』入門であると思うのだが、大学の先生らしく、女子大生が興味を持つように恋の話からしている。それによると、万葉人は「恋」とか「愛」(当時はこんな言葉なかっただろうが)とかの観念的な言葉を使わずに日常的な言葉でそれを匂わす。例えば衣服の紐を結ぶというのは、夫が旅立つときに魂を込めるとか。面白いのは下着を交換してものに宿るそれぞれの魂を身代わりとして持つという。それで紐を結ぶ時には、それを込めるというわけで、人麻呂の有名な和歌を解説する。 2022/06/18
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