内容説明
さまざまな夢と未来への志向をいだきながら学窓を飛び立ったはずなのに、ただ倦怠と惰性をしか見いだせなくなっている十年後の今日の、限りない挫折感を吐露した「十年の後」、“愛の観念”に固執するあまり、ついに結ばれることなく訣別してしまった、過去の恋人に語りかける抒情的作品「贈る言葉」。戦後世代の青春の苦悩を真摯に浮彫りにした、芥川賞受賞作家の中編二編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミスターテリ―(飛雲)
35
ここにある2編の小説は、昭和の恋愛を描いている。恋愛はどの時代でも不変であるはずだが、しかし懐かしさをもって読む世代と、今の若者が読むのとどれだけ違いがあるのか。特に「贈る言葉」の恋愛は、セックスを含めて、当時読んだときはそんなに違和感がなかったが、今の若い人が読んだら思わず笑ってしまうだろう。しかしそれが真実で、同世代の人たちは、みんな同じ時代を過ごしてきて、その結果が平成、令和と新しい文学に受け継がれている。今回も懐かしく読み返した。2021/05/05
シュラフ
32
若者というのは観念論的世界に閉じこもりがちである。勝手に自分の殻をつくってしまうがために現実社会の人間関係に大いに悩むことになる。そんな難しい年代の男女のほろ苦い関係を取り扱った作品である。初版は昭和41年で、全共闘世代の圧倒的な支持を得て空前の大ベストセラー。物語の設定は昭和30年代半ばということでかれこれ60年ちかく前になるのだが、その内容はまったく色あせておらず現代でも十分に読むに耐えうる。主人公の懊悩に若き頃の我が身を重ねてしまう読み手は多いのではなかろうか。読メの81登録というのはもったいない。2016/07/23
matsu04
21
2つの中編。学生の時に読んで以来の再読。当時ずいぶんと共感したような記憶が残っているが、読み返してみると「贈る言葉」の〝ぼく〟の〝君〟への思いはとても青臭く、まだ何モノでもなかった学生だった頃の足掻き続けていた苦い気分が蘇るのである。「十年の後」の登場人物たちにしてもやはり若い。自分にとっては今や「四十年の後」となってしまった訳であるから当然ではあるのだが…。2020/04/20
パフちゃん@かのん変更
6
1973.9.5
桜もち 太郎
6
職場の図書館にあって気になっていた本。「十年の後」「贈る言葉」の2編が収まっている。前作は結婚を間近に控えた男が昔の恋人に思いがぶり返す話。後作は東大の頭のいい学生の男女の性をめぐる物語。男が求め女が拒否する、というくだりの観念論が今の時代に読んでみるとギャグとしか思えなく、思わず笑ってしまった。でも人間って頭の中で折り合いをつけながら生きていく所と、感情で突き進んでしまうところがあるんだろうなと何となく感じた。2014/08/15
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