内容説明
小さな島から上京し、カメラ店で働いていた景子が手にいれた幸せは、見せかけだけのものだった。――心身共に傷つきながらも新たな幸福への旅立ちを予感させる表題作。死化粧師という仕事を選んだ女性の変貌と自立を見つめる「天櫓」。一人息子に先立たれた老夫婦が息子の忘れ形見を探し出す「麦藁帽子」。身近な不幸を見据えながら、真の幸福を求め続ける女性たちを描いた中編三作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shizuka
55
いっときの寂しさに負けて、年上の男性と結婚してしまった女。その男には母との秘密があった。歪んでいく関係。身ごもった子供さえ憎くなってしまう。最後身ひとつでたどり着いた場所が『幸福村』。『天櫓』人間関係がうまくゆかず、選んだ職業が死人化粧師。究極の消去法。最初は情熱なんてなかった。ただ生きるため。ところが。遺体と向き合い背景の人生に触れた時、女は変わった。こういう前向きな変化はいい。『麦藁帽子』最愛の一人息子を失った老夫婦に訪れる、ある吉報。息子も勝手、夫婦も勝手。勝手ながら見えた幸せ。余韻を残す終り方。2016/09/09
dice-kn
2
タイトルからはまったく想像できなかった”幸福”。3篇ありましたが表題作が一番幸福感がないような?? まぁでも区切りをつけて前向きになれたのならいいのかな。しかしよくわからないまま去られてしまう方の立場は? みじめな感じがしないでもないですがこれも運命ですか。(フィクションだけど)人生いろいろだなと感じました。2017/07/12