内容説明
生活のために書き続ける馬琴に、失明の危機が迫っていた。がんじがらめの状況で無学な嫁のお路を督励して、代筆で八犬伝を進める作家の凄絶な闘い。感動の長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yoichi Taguchi
2
滝沢馬琴は最後まで孤高(堅物)の小説家であった。上巻では、亡息・宗伯の嫁としてだけの立場だった『お路』しかも融通の利かない・不器用な嫁として登場したが、下巻に入り激変する。決して表に出さなかった渡辺崋山への思慕。盲しいた馬琴の口述筆記を自ら買って出たあたりから才能が開花する(勿論、努力の賜物だが)。”馬琴の物語であると同時にお路の物語でもあった”この小説、やはり女流作家の描く女性は心底強いと改めて思った。原田康子氏の海霧も、つまるところ主役は主人公の奥方だったな。2020/02/11
33
2
前半までは自分はお路に似ていると思っていたが、後半で一気に強さを見せた彼女に自分は勝てそうにない。願わくば彼女のようになりたいものだ。偉大な作家も家庭を支えるための庶民的苦労は絶えなかった。この小説は史実になるたけ忠実にされてるらしいがだとしたら本気馬琴先生尊敬致します。こんなにも苦しみ抜いて書かれた八犬伝だからこそ今もなお読まれ続けるんだろう。2011/02/04