内容説明
誰のために? 何のために? 慣れない重労働に、疫病で死ぬ者200名、巨大な権力に捨身の抗議をぶつけて屠腹する者50名。未曾有の難工事は薩摩藩士の死屍累々の上についに完成するのだが――。泥海の中に潰え去った男たちの無念に、平時のいくさの惨酷さを見事に描き切った著者の代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
163
下巻に入っても、平時のいくさの 悲惨さを 丹念に描く。幕府の無理難題を恨みながら、 死に行く薩摩の人々…平田総奉行の苦闘が 続く。 お家を恐れる 諸般事情を背景に 工事は 進むが…最後は やり切れない幕引きだった。2018/10/06
キャプテン
42
★★★★★_「きゃぷ衛門とゆく時の旅フェア」【西暦1755年江戸時代─宝暦治水事件編】事故により、疫病により、自害により、次々と果てて行く薩摩藩士たち。さらには友の裏切り、村方や商人たちの横領、凶悪な詐欺、湯水の如く失われる薩摩の血税。藩士を飲み込む巨川の牙。夢も希望もなく、ただひたすらに失いゆく日々。それでも平田靫負殿ら藩士たちはやり切った。こぼれるこの涙は、体のどこから来るのか。後世の拙者には泣く権利すらないのに。勝者は誰で、敗者は何なのだ。藩士らの思いと共に、血と涙の千間堤が今もなお、巨川を見守る。2018/01/10
B-Beat
38
*…平時のいくさの惨酷さを見事に描き切った著者の代表作」とあるが、これまで読んだ葉室作品「蜩の記」や帚木作品「水神」の源流ともいうべき十分な読み応えとスリリングな展開、登場人物達の描かれる生きざまの迫力に時の経つのも忘れて読んでしまったというか。テレビ「3カ月でフルマラソン」で揖斐川マラソンを知る。偶然にも揖斐川を知った直後にこの本に出会ったのも何かの縁かと遠く九州に住む身ゆえのなにやら謎めいた独りよがりの納得感。この大会に参加して当時を偲んで走ってみたいと思ったのがこの本を読んでの直後の正直な読後感。2014/12/15
James Hayashi
31
吉川英治氏が唯一の門下生を取ったのが著者の杉本氏。吉川氏逝去の翌年に本作で直木賞受賞。やり場のない怒り。戦なしに多くの薩摩の人力が死んでいく。抗議の自害、赤痢。無力でないが権力に歯向かえず、命令を素直に受け入れ治水を行う(宝暦治水事件と知られる。まさしく事業でなく事件。薩摩を弱体化させる為に仕掛けられ、多大な犠牲を生み出した。)無力感からか、感動と脱力が読後感を包み込んだ。2019/05/31
JUN
26
この時代の人々は、腹を切ることが美学だったんだろう。切ない時代だと感じてしまう。2018/06/30
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