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内容説明
真の美しさを発見するためには、教養と呼ばれるものを否定する位の心がまえが必要です――。土俗的なアイヌ音楽に影響を受け、日本に根ざす作品世界を独学で追求した作曲家、伊福部昭。語りかけるように綴られた音楽芸術への招待は、聴覚は最も原始的な感覚であり、本能を揺さぶるリズムにこそ本質があるとする独自の音楽観に貫かれている。「ゴジラ」など映画音楽の創作の裏側を語った貴重なインタビューも収録。(解説・鷺巣詩郎)
[目次]
序
はしがき
第一章 音楽はどのようにして生まれたか
第二章 音楽と連想
第三章 音楽の素材と表現
第四章 音楽は音楽以外の何ものも表現しない
第五章 音楽における条件反射
第六章 純粋音楽と効用音楽
第七章 音楽における形式
第八章 音楽観の歴史
第九章 現代音楽における諸潮流
第十章 現代生活と音楽
第十一章 音楽における民族性
あとがき
一九八五年改訂版(現代文化振興会)の叙
二〇〇三年新装版(全音楽譜出版)の跋
インタビュー(一九七五年)
解説 鷺巣詩郎
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あやの
48
伊福部先生の講義を受けたらこんな感じだったんだろう。入門とは言え、音楽用語のシャワーと独自の音楽観。そして、1950年代に書かれた本ということで今となっては読みにくい……しかし、主観的な概説にも関わらず、独自の論理が貫かれているので、納得させられてしまう。Rシュトラウスの「ツァラストァストラは~」とサティの「ジムノペディ」を比べて「どちらが音楽的に傑作か」を評価してしまうなんて「???」だったが、読んでいくと「なんか、判るかも」になっていく。時代を感じる部分も多々あるが、逆に新しい見方を貰えた本だった。2023/05/04
らぱん
46
本書のメッセージの核は掲げられたゲーテの言葉「真の教養とは、再び取り戻された純真さに他ならない」に尽きる。その内容が岡本太郎「今日の芸術」と似ていることに軽く驚き、同時代人のパンクな異端の地位を共有しているのだと勝手に納得した。芸術とは自分の感覚で創作され、味わうべきものであり、お仕着せの解説で結構とされたものを疑えという姿勢だ。本書は、音楽を音楽以外のものから語り、専門用語を噛み砕き、面白さを伝えてくれる。中でも「第8章音楽観の歴史 古代~19世紀」での博識を披露しながら展開される論説が愉しかった。↓2019/08/03
あちゃくん
44
一流の音楽家による、太古の昔からの音楽の変遷について書かれた本です。きちんと言語化された音楽観は、単に音楽的な感覚だけに頼らず新しいものに触れたなぁという感覚がありました。2023/02/15
ナマアタタカイカタタタキキ
43
専門用語の問題さえどうにか出来れば、音楽の成り立ち、本質や仕組み、そして音楽が辿ってきた歴史(書かれた時代が時代なのである程度のところまでだけど)を一望できる為、入門書として有用。他の芸術分野と比較しつつ解説されるので、既にある知識の中にも新しい発見が度々あった。『現代生活と音楽』の項、日常の中であまりに多くの音楽に晒されるあまり、良し悪しを聴き分ける感性が鈍化してしまう問題は、今日でも抱えたままになっているどころか、ますます深刻化しているように感じる。そもそも、問題であると認知されているのかどうかすら…2020/04/05
1959のコールマン
23
☆4。読了後の第一印象は「伊福部さん、よほどサティがすきだったのね」。まあそれはいいとして、古い!古すぎる!なにせ68年前の本である。どのくらい古いか。「現代音楽における諸潮流」の項にジョン・ケージがいない。それくらい古い!かといって伊福部ファンだけの本ではない。チンドン屋の例とか、更科蕎麦の例とか、「あまり音楽、音楽とこれに執着、惑溺すると、かえって真の音楽がわからなくなる」という老子の言葉がでてきたりして、ちょこちょこ面白い部分がある。もちろん敷居が高い所もあるが・・・。2019/07/05