内容説明
(1)武士道精神を愛して卑怯を憎み、(2)他人の向上に熱心な性向をもち、(3)論理的、合理的でないものを尊ぶ情緒の国に生まれたことを誇りとする、情に棹さしてばかりの数学者は、いかにして誕生したか。独特の〈教育論〉〈文化論〉、十八番の〈家族もの〉、皆が貧しかった時代の少年期に(1)~(3)を血肉にしていく経緯を活写した中編等、論理の美しさとユーモアが見事に和した、48編の傑作エッセイ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SOHSA
20
「国家の品格」に続いて読了。タッチは「国家〜」よりも柔らかく軽いが根底を流れる思想は、まさに「国家〜」のベースとなっているものに間違いない。作者の思想に対する評価はともかくも、微塵もぶれることのない言説の潔さは、爽快でさえある。2000年に書かれたという本書の中で作者が指摘した未来に対する危惧は、残念ながらいずれも現実のものとなってしまっている。作者の鋭い洞察力にはただ脱帽せざるを得ない。2013/09/18
ikedama99
15
久しぶりに筆者の本を読んだ。タイトルの通りの「古風堂々」とした本。共感できる部分が多かった。Ⅲの中のフェルマー予想解決に触れた「三世紀半を要した数学ドラマ」、数学書を読むのに時間がかかる理由に触れた「美しくなければ数学ではない」、解けた喜びにふれた「数学が解けた時のうれしさ」Ⅳの中の「少子化の原因」、「真の国際人」その通りだと拍手したくなったりした。行き過ぎた感じの表現もあると思えたが、でも読んでいて微苦笑するところもあったりして、相変わらず面白くかつ考えながら読めた。2020/03/07
ひよピパパ
14
数学者藤原正彦氏のエッセイ集。出版から結構時間がたつが、その内容は普遍的面白さがある。父で作家である新田次郎氏との自著出版にまつわるエピソード(「書き始めた事情」)は読んでいて心があたたまる。数学の必読書籍の紹介(「美しくなければ数学ではない」)や明治期の名著案内(「標語人間」)は、今後の読書の参考になる。オススメの一書。2020/01/06
さきん
10
武士道精神を愛して卑怯を憎み、他人の向上に熱心な性向をもち、論理的、合理的でないものを尊ぶ情緒の国に生まれたことを誇りとする。2015/07/12
フーミン
9
父・新田次郎さんに面白いと太鼓判を押されただけにまず間違いなくオジサンには受ける作品だと思います。社会のアメリカ化、教育のアメリカ化が、古き良き日本文化や武士道精神をなくしていく危機感を訴えています。多少過激な感じもしますが、自分のことは棚に上げてこの世の不満・誤りはビシッと言える作者に惚れ惚れします。2016/08/22