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内容説明
二宮尊徳といえば、薪を背負って書を読む「二宮金次郎像」ばかりが有名かもしれない。だが彼は、幕末期に、一農民の出身でありながら、600を上回る荒れ果てた農村や諸藩の再建に見事に成功した人物である。尊徳は、どこまでもポジティブで、合理的だった。たとえば……尊徳は困った人々にお金を貸す時、必ず「知恵を働かせる生き方」も教えた。ある女中にお金を貸した時は、どうすれば燃料の薪を節約できるかを事細かに教え、考えて銭を生む楽しさを教えて、生活を立て直した。彼は人々の心を燃え立たせる徳の人であると同時に、世界に先駆けてマイクロクレジットの仕組みを生み出した創意工夫の人でもあった。こんな人物の哲学を知っていれば、成功しないはずがない。実際に、渋沢栄一、安田善次郎、御木本幸吉、豊田佐吉、松下幸之助、土光敏夫ら、偉大な成功者たちの多くが、実は、尊徳を信奉していたのだ。本書は、二宮尊徳の生涯と哲学、そしてその影響力をわかりやすく解説。すべての人を劇的に変える「不滅の成功哲学」を解き明かす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takam
20
勤勉倹約という資本主義の維持に必要な精神を日本に浸透させた人物の一人であろう。その影響度は戦前では福沢諭吉や渋沢栄一と同等だったろうと思う。この本で面白く読めたのは、二宮尊徳が桜町を立て直す際に補助金を取りやめるように進言したシーンである。ケインズであったら補助金を推奨するだろうが、ケインズ経済学の欠点をかなり早くから見抜いていたと思われる。二宮尊徳は自然競争や独立自尊がいかに大事な成長のファクターか理解していたのだろう。補助金漬けでいくつもの産業を失った今でこそ日本人に染みる考え方だと思う。2020/08/21
Yuma Usui
18
7年ぶりに再読。二宮尊徳の思考や行動、後世への影響を紹介している。「道徳経済一元論」「至誠」「勤労」「分度」「推譲」などは、一見すると説教くささを感じるが、経済立て直しのために自他共に利益があり合理的と感じた。また「天道」に従うべきと説く儒教に対して「勤勉」や「勤労」を通した作為を積極的に行い、自然に負けない「人道」を奨励している点で興味深い。洪水や病で両親や先祖代々の土地を失った尊徳のその後の奮起や実践は多くの人に参考になるものがあると思う。2024/01/14
maimai
15
世界で絶賛されている二宮尊徳。朝から晩まで畑を耕し各地の農村を再生させて徳川幕府から絶賛された彼は実際には効率と工夫を好む性格だったみたいです。自分の繁栄だけを望む家は衰退して、他者の繁栄を望む家は繁栄するとあったように自分よりも他人を優先した二宮尊徳だからこそ国を動かす人物になったのかもしれませんね。国債100兆円、就職難、海外企業の進出、様々な問題を抱えている現代日本において大切にする心は、なんとしても勝つ、我先に儲けるといった心ではなく、他人の為に働く尊徳の心かもしれません。僕には無理だけど。2020/09/22
ATS
14
★★★二宮尊徳の伝記、思想などが平易に書かれている。キーワードは至誠、勤労、分度、推譲、勤倹譲、積小為大、天道人道論、道徳経済一元論、一円融合など。昨今、大企業の不正が多発し大きなニュースになっている。そもそも日本人は環境によって不正に走る傾向があり、別に最近の日本人が下劣になったわけではない。戦後なんかは日本製の製品はいまの中国製品みたいな扱いだったことからもそれはわかる。まぁ、それは置いといて今の不正してやれみたいな時代にこそ二宮尊徳の思想・哲学が必要なんじゃないかと思う。2017/12/11
mittsko
11
偉人伝でつづる思想書、もしくは自己啓発本。著者は衆参議員、神奈川県知事(尊徳は小田原生れ)などを歴任した政治家。二宮尊徳の生涯、思想、継承と現代への影響を順に解説することで、その偉大さ(本当に偉人だとボクも思う)を伝え、読者の思想的覚醒をうながす。とくに(農民ではなく)「経営者・実業家」に対する訴えに一章を割いており(第7章)、「資本主義」の放埓を戒め、「経済と道徳」との一致こそが希望だと説く。 ※ 尊徳の「坊主」嫌いは有名だが、本書では一切「宗教」が出てこない。ここまでだったの? 逆に調べてみたくなった2021/02/19