内容説明
政治家と軍人の軋轢、第一線の兵士の辛苦、失策、偶然、そして英雄的行為……。錯綜する戦況を俯瞰し、臨場感たっぷりに人間模様をも再現。大戦の帰趨を決した「奇跡」の舞台裏を活写する、稀有の戦記発掘。〈主要線戦闘地図収録〉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぷるぷる
4
サラエボ事件から丁度100年周年ですし勉強するにはいいタイミングかと。但し本書自体は50年前のもの。フランス軍ジョゼフ・ジョフルと独軍ヘルムート・フォン・モルトケの両参謀総長を中心に展開。当初戦力的に劣る英仏軍が如何に戦ったのかの舞台裏を覗くようで興味深くはある。実際の戦闘は失策と拙攻のオンパレード。まだまだ酒飲みながら戦ってたり司令官の睡眠が優先されたりの大らかな時代。とは言え砲台が如何に決定的な力を持つかがこの戦いで明らかになったとされており、現代に続く大量破壊兵器がここで成立したのかと感慨深い。2014/08/07
ソノダケン
3
フランス視点で書かれた本で、扱うのはマルヌの会戦だけ、第一次大戦全体を知るための入門書には適さない。ただ才気煥発さが重視されるフランスで、やたらと地味な総司令官ジョフルがいかに特異な存在かわかった。時代遅れの突撃作戦への執着、飛行機と砲兵の協働、大モルトケが打ち立てた統帥本部の概念の限界など、いろいろ勉強になる。2014/11/16
toriarii
3
第一次世界大戦の序盤、「マルヌ会戦」をフランス総司令部から記述した作品。1870年と1940年で阻止に失敗し、なぜ1914年は成功したのか。本作では フランス軍の作戦行動から、失敗への対応、実務の厳しい現実をどう処理するかといった教訓を、作戦の推移を通してわかりやすく解説してくれている。また、概要的ではあるが、ドイツ軍が作戦初期の成功を維持できずに失敗した要因も、軍組織を通して指摘してくれている。本作戦の功績、失態を一個人に押し付けない記述は、歴史小説好きには新鮮だった。お薦めの作品 2014/06/05
gauche
2
戦闘経過そのものよりも、ジョッフル元帥の為人の描写に興味を持った。まるで愚人であるかのように書かれているが。もしかしたらこの人は日本的な統率者の理想を体現しているのではないだろうか。その理想をフランス人が見たら、このように写るのではないだろうか。2014/04/07