内容説明
戦後からの脱却を掲げ、真の独立を目指す安倍政権。だが一方で同政権は、安保法制から構造改革、TPPまで、一層の対米従属路線へと突き進んでいる。なぜ日本では、自主独立を叫ぶほど属国化が強化されていくのか。そこには現実を見ない保守勢力と、それに依存するリベラルによる「キッチュ」(思考停止)という病理が隠されていた! 日本の保革構造からヘイト、カウンターまで、あらゆるところに潜む「キッチュ」の実態を暴き、真の日本の道を問う!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さきん
12
私は、日本を自主独立させたいと考えているが、その道は険しい。日米同盟を破棄されると核兵器も持たざるを得なくなるし、経済、産業もさらに鍛える必要があり、情報戦も戦い抜かないといけない。政策を失敗したところで周りは助けるどころかつけ込んでくるだろう。これは、とても高いコストがかかり、高いリスクにさらされる。現実は、まだそこに踏み込む準備ができていない。なので、親米と批判される行動をせざるを得なくなる。これを著者はキッチュやTINAという用語を多用して明快に解説している。2016/04/07
hk
7
戦後、保守は対米従属を否認し、リベラルは冷戦という事実から目を背けることで、55年体制という思考停止の部分補完がなされたという指摘は面白い。どちらも敗戦の否定という同じプラットフォームに立脚している。だが保守が日本は戦勝国≒アメリカと一体化したというより現実的な虚構を採用したのに対し、リベラルは戦前の八紘一宇の精神≒戦勝国による戦後民主主義・絶対平和主義という理想主義的な物語に固執した。結果として自由主義陣営についた恩恵で、日本は目を見張るほどの経済成長を達成することとなる。しかし、それはリベラル側が冷戦2016/05/06
ケイ
7
「右」も「左」も「キッチュ」という病に縛られており、認めたくないものは認めない心理に陥っている、というのが本書の内容です。筆者は「親米保守」、「反米保守」、「左翼」の、どの立場にも与しません。彼ら彼女らのキッチュという病からどうすれば立ち直れるかをきっちり書ききっています。「歴史を見つめる」という作業を、日本人は意識的、無意識的にしてこなかったということをまざまざと思い知らされました。2016/03/26
ドクターK(仮)
4
いわゆる左翼・リベラルや親米保守を批判する言説はよく見られるものの、著者は反米保守に対しても批判を加える。曰く、戦後の日本がアメリカに従属することで少なからぬ繁栄を享受してきたという現実を直視していないと。この現実を踏まえると、自主独立(=対米従属の否定)の路線は、反米保守が思っている以上にコストが大きく、広範な支持を取り付けることも難しいという。こうした見方は非常に新鮮であるが、それと同時に、保守・リベラルを問わず、あらゆる勢力が思考停止に陥っている日本の現状をまざまざと見せつけられたような気がした。2016/03/03
Hiroki Nishizumi
1
考えさせられた。右も左も思考停止とキッチュとの指摘は当たっていると思う。タチが悪いことに、これに自己正当化が加わるとどうしようもない。即効薬は無いと思う。道は遠いが、一から積み上げしかないか。2019/03/15