- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
彼は何を考え、何をしようとしたのか――そこから見えてきたのは、今も変わらぬ戦略なき国家・日本の姿だった……。満州事変の首謀者であり、希代の戦略家として知られる石原莞爾。太平洋戦争に至る戦前の歴史は、石原を抜きには考えられない。戦後70年を経て、石原への関心は衰えることなく、伝記をはじめとする出版物も陸続と上梓されている。ところが、石原の戦略構想を分析・検討したものは、ほとんど見当たらない。本書は、石原の戦略構想を時代状況や陸軍の動向と関連づけて詳しく検討、その行動を紹介するものである。戦略なき国家・日本にあって、石原は何を考え、何をしようとしたのか――そこには、歴史の教訓が隠されている。
目次
プロローグ・柳条湖(りゅうじょうこ)事件――石原莞爾登場 第一章・満州事変と石原莞爾(1)――南満州占領と陸軍中央 第二章・満州事変と石原莞爾(2)――北満州進出と陸軍中央 第三章・昭和初期の戦略構想(1)――世界最終戦争論と満蒙領有 第四章・昭和初期の戦略構想(2)――日米持久戦争の想定 第五章・参謀本部時代の戦略構想(1)――対ソ連戦備の問題 第六章・参謀本部時代の戦略構想(2)――対中国政策の転換 第七章・日中戦争と石原莞爾(1)――華北での日中衝突 第八章・日中戦争と石原莞爾(2)――全面戦争と石原の失脚 エピローグ・太平洋戦争――失脚後の石原莞爾
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
26
昭和軍事史の専門家の手による、石原莞爾の戦略構想の解説書。時代ごとに丹念に記載されており、その骨子、変遷と実際の軍事行動への考えがよく分かる。対米最終戦争に向けた構想に基づく満州の日本編入の考えが満州事変を引き起こしていく。他方日中戦争については、対米最終戦争に加え、対ソ防衛の観点から中国との連携、関係強化を考えて反対し、むしろ華北権益を手放して講和せよとの考えで、結果的にこれにより軍を離れることになる。日中戦争が泥沼化するとの予想は見事と言えるが、その前提となる世界観には首をかしげざるを得なかった。2018/01/13
masabi
14
【概要】石原莞爾の戦略構想の骨子と変遷を解説する。【感想】満州事変の首謀者石原の骨子は日米最終戦争論だ。東西の大国が雌雄を決し、その勝者が世界平和、人類を救済するという誇大妄想的な構想だ。しかし、日米の対決に向けた一連の方策で満州を組み込んだ自給自足体制、日満中の国家連合、英米のアジア放逐などその後の政策目標が出揃う。目的と資源の調整を図った戦略家であったものの、自身が軍命令を無視したように部下を律することができず構想は破綻してしまう。ただし、構想が実現していたとしても冷戦構造に組み込まれただろう。2020/12/10
叛逆のくりぃむ
14
石原の主著である『最終戦争論』、『戦争史大観』のみならず実際の石原の言行にまでも触れながらその軍事的構想を闡明にしている。統制派の首魁である永田鉄山の構想を基本的には受け継ぎながらも総力戦体制の完全な構築には疑問を抱いており、それが北支事変における他の統制派軍人との対応の差となって現れたことが分かる。『もし永田ありせば……』という言葉を聞くが、恐らく永田を以てしてもこの事態には対処しえなかったことが読み取れる。2016/09/18
フロム
13
大著「昭和陸軍全史」の補足本と言った印象が強い。なので読前、読後でもいいので昭和陸軍全史は併せて読みたい。著書は恐らく日本破滅の理由を満州事変と満州国の建国。そこまで遡れるのではないか?と考えている。日露戦争の勝利が日本を強国と勘違いさせたのは間違いないのだが満州事変→満州国の建国の流れは不自然な位に鮮やか過ぎる。この一件で「我が国も列強諸国の仲間入り!」と勘違いするのはマァしょうがないとも言える。気になるのが石原は持論に対してどこまで本気かと言うことだ。2019/03/26
無重力蜜柑
11
気宇壮大な歴史観と戦略論、並外れた実行力によって満州事変を引き起こした石原莞爾。その戦略構想を取り上げる本。彼一人にフォーカスするというよりは昭和初期の陸軍内の抗争を石原を中心に描くという感じで、ぶっちゃけ筆者の『昭和陸軍全史2』と大差ない内容。あの本をきっかけに石原のことをより深く知りたくなった自分には期待外れの内容だった。2024/01/21