内容説明
14世紀の初頭、アナトリアの辺境に生まれた小国は、バルカン、アナトリア、アラブ世界、北アフリカを覆う大帝国に発展した。強力なスルタンによる広大な地域の征服から、「民族の時代」の到来により「多民族の帝国」が分裂するまでを描き、柔軟に変化した帝国の仕組みと、イスタンブルに花開いたオスマン文化に光をあてる。 イラク、シリア、そしてパレスチナと、現在も紛争のさなかにあるこの地域を理解するためにも必読の書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
96
14世紀に誕生した小国が大国に発展し、19世紀までの500年間いかに安定の帝国であったかが語られています。オスマン帝国は一般的に理解されているような国であったのかが興味深いところでした。スルタンのもとの支配国家から他民族国家による分列に至るまでの帝国の柔軟な変化、オスマン文化などは帝国崩壊後の世界の原点であるように思いました。現在も紛争の中にある国々の状況を理解する上で、かつての国家を知ることは有益です。2016/06/05
チョコ
57
オスマン帝国外伝愛と欲望のハレムのドラマにはまり込んで、背景知りたくなって読んだ本。高校時代は世界史選択で史学科目指した時もあったので、わかっていたつもりが全く覚えてなーい!!そして、今も昔も同じこと人間やってるなぁ、、と。最盛期から没落へ向けての流れが、俯瞰してみるととてもわかりやすい。2022/07/01
南北
53
現代のバルカン半島・トルコ・シリア・エジプトを支配したオスマン帝国は国民国家の現代から見るとなかなか理解することができない。民族・言語・宗教がバラバラな人々を統治した帝国は現代から見れば多くの民族から構成されていたが、帝国の後継国家と主張しているのはトルコだけという不思議な状況を呈している。本書は18世紀までの前近代のオスマン帝国を扱っており、バルカン半島から北アフリカまでの地域での政治的な混乱も帝国に対する知識が不可欠なのだということが改めて認識できた。2022/02/15
かんやん
30
13世紀、モンゴル軍の西進(ルーム・セルジューク朝の属国化)により、アナトリアには小国家が乱立。オスマン家は、雑多なイスラムの無頼集団の一つだったが、侯国として先ずバルカンで略奪→同盟→属国化→支配の順で栄えた。バルカン、アナトリア、アラブ、北アフリカを収める大国となり、中央集権化する。イスラム、キリスト、ユダヤ教からなる多民族国家である。雄大な歴史の流れだけでなく、社会構造、税システム、文化まで分析。近代化の遅れ、ナリショナリズムの勃興、列強の干渉、経済のグローバル化により、ゆっくりと衰退してゆく。2022/10/08
風に吹かれて
21
オスマン帝国はイスラムの世界と単純に思っていたが、バルカンの国として出発し、征服を広げる中でエジプトを含むアラブ世界の支配者となってから「イスラム化」を深めていったことを知る。 多民族多宗教の帝国には、徴税請負を下請けした地方有力者が台頭し、フランスやイギリスなどが手を伸ばしてくるなかで周辺地域に民族意識が生まれ、民族や宗教問題が独立した国家間に残り紛争は今も消えない。 →2022/12/17