内容説明
本書の主題は、具体的事例に則して言えば、贈与と交換の社会哲学である。より正確に言えば、本書は、贈与と交換を峻別する。そうすることで、近代に出現した市場経済、そして特殊近代的な資本主義経済の歴史的位置づけ、ひいてはそれらがかかえる歴史的限定性を明らかにできるからである。…… 要するに、本書は、人類が歴史的に経験してきた種々の相互行為を観察することを通して、社会存在としての人間の根源に迫る試みである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ex libris 毒餃子
6
マルキシズムを下地にモース『贈与論』を基にして、贈与と交換について論じた本。贈与と交換をマルキシズムにおける「交易」というキーワードに照らし合わせて、人間本性について検討している。モースもマルクスも分かっていないとなかなかキツい。しかしながら、今村仁司の文章は読みやすくて良い。2016/11/16
左手爆弾
3
いつもの今村仁司の本。というのは、要するに整理されてはいるものの、読書ノートだということだ。主張や論点が書いてあるわけではない。この本が最初に出たときならともかく、今はモースやレヴィ=ストロースなどを日本語で直接読むことができる。そちらを読んだ方がはるかに有益だろう。2017/05/11
かとたか
1
西洋の社会学者がコミュニケーションから社会を捉えたように、交易から人間を捉え直すと言う試み。ものの交易だけでなく、精神的なものも含む。文庫ではあるが、壮大な試みを感じた。社会、哲学、歴史、経済、宗教、民俗、政治、あらゆる事象の問い直しとなった。2022/04/27
ぴの
1
タイトルにもなっている「交易」の概念ですが、後半になるにつれて「贈与」「交換」が中心となるため「交易」の重要性が霞んでしまったような印象を受けました。贈与も交換も、共に交易という大きな相互行為に含まれるのだと思いますが、であれば『贈与する人間』でも良かったのかなと。また、結論で作者は、資本主義は贈与体制が破壊された結果現れたのであり、それは人間本来の在り方を犠牲にしたことを意味すると強調します。資本主義がいくら嫌でもこんな世の中になってしまったのは事実なんだから、イマココをベースに考えるべきだと思います。2017/05/24
代理
1
社会は三者関係だ、っていうのが最後まで飲み込めなかった。未開社会を何でもかんでも資本主義的に読み解くのを筆者は諌めるが、未開社会を何でもかんでも非資本主義的に読み解くのはいいのだろうか?2017/04/23