内容説明
野心的な女性作家が愛したのは、女癖が悪く、夢を追い続ける映画人だった。彼との思い出が色濃く残る古都で、作家は幽霊が見えるという墓守娘の話に耳を傾ける。それは情念と欲望が絡み合う壮絶な愛の物語だった。
※本書は二〇一三年十月に小社より刊行された単行本『恋地獄』を改題し、文庫化したものが底本です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
116
何冊か読んだ花房観音。尊敬する読友さんの評価を見ながら、苦手意識を持つ自分のお子様さ、浅さを情けなく思っていた。が。しかし。これはイケた。相当良い。私にも漸く花房観音の耽美、恋の業、情念の一片が刺さった。この男との刹那のためなら地獄に堕ちても構わない。そんな暗い焔が、私にもあった。人生をかけてこの男に復讐しようと誓った。今でも時々その想いが顔を出す。恋情と憎しみの境界を人は引けるのか。観音が「私の今のところ唯一の恋愛小説」と言っているとのこと。小説の女の純情なのか、観音の純情なのか、その境界も曖昧だった。2017/07/25
よっち@疲れ目注意☆彡
93
半分ジャケ買い。半分ペンネームに興味を惹かれた。自分で自分を「観音」と名乗るとは、どんな作者なのだろうと。取っておくような内容ではないだろうと思い、すぐ読んだ。作者唯一の恋愛小説ということだけど、まぁ正直、読む前からの予感通り、浅かった。予感を裏切られる可能性を期待して購入したわけだけど、残念ながら。ちょっと構成の凝った単なる不倫の小説みたい。不倫とエロと幽霊と。盛り付けすぎてバランスが取れてない。あざとくてグロテスクでさえ、ある。つまり、美的なものを期待すると外れる。私は小説には美を期待するので、残念。2016/06/05
キンモクセイ
46
京都に移り住んだ女性作家がいつも想ってしまう男がいた。どうしようもない男なのに忘れられない。それはただ単に欲に溺れていたのか相性が良かったからなのか。いや本気だったから。取材で出会った墓守女の若い頃の話は宿命なのか。「寂しさってつのると恨みに変わるんやで。」墓守女が言うと説得力ある。「恋の地獄になんて二度と近よりたくない。身体だけでいい、心なんていらない。」「恋は極上の快楽と幸福と身を切られるような別れの苦しみを伴っている。」本当の恋をして終わってしまった人にしかわからない言葉の重みだろう。2020/02/16
p.ntsk
42
【読メエロ部】京都を舞台にしたエロス&ホラー。官能描写や恐怖表現はそれほどではなかったです。花房さんお得意の女の性、情念を描いた恋愛小説という感じです。[共読反映の為登録] 2019/09/14
メタボン
29
☆☆☆ 官能にしてもホラーにしても中途半端。もっとこう情念に身を委ねるようなねっとりした花房観音を読みたい。「見える墓守女」という設定が良かっただけに残念。2019/01/14