内容説明
ものとの出会いで自分が変わる運命の物語。
対人関係に自信が持てないバイト店員、イベント司会ばかりの女優、喧嘩早い性格で転職を繰り返す元不良、いじめが原因で3年間引きこもる元高校生、恋人の死にうちひしがれる悲嘆の女性――。人生に躓いた人たちが、「ひろいもの」をすることで始める自己改革。セカンドバッグ、サングラス、警察手帳、ハンドグリップ、腕時計。思いが込められた道具を拾った人々に運命の転機が訪れる。
5つの物語をオムニバスで綴っていきながら、それぞれはリンクしていく。
『どろ』『かび』『とげ』の巻き込まれ型小説の名手として評価の高い著者が、あらたな手法で我々を魅了する、珠玉のハートウォームストーリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ🍀
182
5つの拾いものから繋がる人と人との物語。落とし物は届け出なければいけないけど、もしかしたら意図的にそこにあって、誰かに拾ってもらうのを待ち続けているのかもしれない。導かれるように。人には忘れられないことも忘れたいときもある。熱風や寒風に背中を押されても心を閉ざし、長く辛い日々を過ごしてきたとしても、ちょっとしたきっかけで爽風に変わることもある。今日は少し出掛けてみようか。歩いてみようか。世の中は嫌なことばかりじゃないのに、なぜこんなに身構えていたのかな。何かを拾えば何かに気づく。私もサングラスを探そうか。2023/06/17
シナモン
132
とても良かったです。セカンドバッグ、サングラス、警察手帳、ハンドグリップ、腕時計…自分自身に自信を持てなかったり、うまくいかない日々を過ごしていた人たちの人生が、偶然拾ったものたちをきっかけに好転していく。年の瀬に心がぽっと温かくなる短編集でした。2022/12/30
相田うえお
123
良かったです。★★★★★前にデパートのトイレで串団子らしき包みが置き去りになってたんです。で、落とし物係に行ったんです。「これ、ひろったんですが。」袋のなかを確認後「ありがとうございます。お預かりいたします。なお、2ヶ月経っても落とし主が取りに来ない場合はお客さまのものになりますのでお名前を頂戴してもよろしいですか。」当方(本気?腐るでしょ!)「いえいえ結構です。」多分、応対マニュアル通りなんでしょうが、まじ顔で言われると吹き出しそうでしたよ。だって2ヶ月経って、ひからびた串団子をもらう自分を想像したら。2015/11/28
chiru
119
山本甲士さんの、5編で繋がる連作短篇集。人生に躓いた人たちが偶然「ひろいもの」をしたことから物語は生まれる。絶望の時、足踏みしてるだけじゃダメ。考え方ひとつで人生が、良いほうに転がり出す。その『🔑』となったアイテムは… 警察手帳、セカンドバッグ、ハンドグリップ、腕時計…誰かに大切に使われていた「道具」たち。持ち主からのエールが、幽霊として伝えられたり、道具に魂が宿っていたり、本物の刑事に間違われた男の前向きな変化が嬉しい🚓「徐々に心が晴れていく」 それは雨上がりの虹のようにキラキラと輝いてる🌈✨★42022/12/02
レモングラス
108
今年最後の登録がこの本でよかった。心地よく今年を終え、良き新年を迎えるに最高の一冊。人生は些細なことから動き出したりする。がらりと変わることがある。何かを拾ったことで変わっていくハッピーな連作5篇。あっ、繋がっているのねって感じで、前に読んだ登場人物がちょこっと出てくる。セカンドバッグ、サングラス、バッヂ、ハンドグリップ、ウォッチを拾ってのお話だけれど、さてさて私の場合はと嬉しくなるようなワクワクするような。そういえば私、同じ紙バッグを持っている人のを間違って‥ということがあったなあって思い出したり。2022/12/27