内容説明
これぞエルロイ、これぞ警察小説――新たなる傑作の誕生。
戦時下でもジャップ殺しの捜査を継続することで警察の公正さをアピールする。それがLA市上層部の結論だった。だが真犯人を捕らえる必要はない。都合のいい変態かジャップを捕らえて真犯人をデッチ上げろ。その意を受けて、ダドリー・スミスが動き出す。一方、LA市警本部長候補である刑事ウィリアム・パーカーは、汚職警官ダドリー・スミスに狙いを定めていた。警察官は清廉でなければならない――アルコール依存症に苦しみながらもパーカーはヒデオ・アシダに接近、ダドリー失脚の機会をうかがう。
アシダ、ダドリー、パーカー。それぞれの正義のために共闘し、裏切り合う男たち。その思惑に巻き込まれた女ケイ・レイク。反米ジャップと共産主義者への弾圧がはじまったLAで、戦争のパニックに乗じて儲けようとする男たちが悪辣な策謀を紡ぎ出す――
警察内部の暗闘。国家同士の戦争。愛国と反米。ヘイトの嵐の中で、男たちは真実にたどりつくことができるのか? ミステリ史上最強の警察小説、ここに降臨!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
87
ジェイムズ・エルロイは新作中心に読んでいる作家です。脳内BGM、ムーンライト・セレナーデで一気読みしました。真珠湾攻撃の前後というキナ臭い状態で理解は出来るものの、ジャップと何百回も連呼されると、流石に気分が悪くなります。当時の日系アメリカン人は、大変辛かったんでしょうね。トータルの感想は、下巻読了後に。2016/08/02
harass
77
1941年ロサンゼルスの日系人一家が惨殺され、腕利きの日系調査官が真相を明らかにしようとするとき、真珠湾を攻撃され日本の宣戦布告を受けた米国社会。ロス市警を中心に、それぞれの激しい欲望と野望が暴力と醜聞で彩られるエルロイの最新作。お馴染みの登場人物たちも出てくる。久しぶりに彼の小説を読むがああこれこれとうなずきながらページを捲った。特定の人種への暴力と憎悪が正当化される時代というものの描写に怖れ、痺れる。トガリっぱなしのエルロイの牙は相変わらず。下巻へ。2017/09/19
藤月はな(灯れ松明の火)
70
ダドリー・スミスだけでなく、バッキ―、リー、ケイ、バズ、クレアなどの暗黒4部作の登場人物が出てきて「久しぶり、お前ら!」状態になるエルロイ新作。真珠湾攻撃で日系人や中国系に憎悪が沸き上がるアメリカ。その中で起きる日系人の切腹事件。だがそれは殺人の匂いがした。しかし、エルロイ作品の男どもはどいつもこいつも女に夢と幻想を見過ぎだな・・・。そしてアシダのバッキ―に対する友情の濃さとまるで好きな人を片思いしている幼馴染を誘惑して探りを入れるようなケイの言動にセンサーが反応してしまった腐女子なのでした^^;2016/10/28
ヘラジカ
36
やはり凄まじい情報量。過去最長の大作に、過去最大級の密度と言っても過言ではないかもしれない。はっきり言って旧LA四部作を読んでいない読者はついていけないのではないだろうか(逆に読んでいると、ブライチャートと友人の日系人のエピソードを思い出して膝を打つことだろう)。完全に『ブラック・ダリア』のネタバレになっている箇所もあるので、時系列的に前の物語だからと言って、こちらを先に読むのはあまりオススメ出来ない。上巻前半は少し緩やかだが、依然として惹きつける力を持っている。読み始めるとなかなかやめられない。下巻へ。2016/05/29
鱒子
23
図書館本。新暗黒のLA4部作の第1巻。旧4部作でフェードアウトしていったキャラたちが戻って来た!まだ登場してないキャラもいるので、とても楽しみです(ミッキーコーエンとラスミラード待ち♡)。旧作で独立した存在だった「ブラックダリア」が、この作品では密接にリンクしてきます。忘れているところも多いので、私には旧4部作の読み返しが必要です。エルロイ作品は、相変わらずキャラクターが多くて混乱します。「ホワイトジャズ」の巻末に一連の事件の年表が載っているので、それを横目で見ながら、とりあえず、下巻へGO!です。2016/09/08