内容説明
【日本SF大賞受賞】2020年、流れ星の発生を予測するWebサイト〈メテオ・ニュース〉を運営する木村和海は、イランが打ち上げたロケットブースターの2段目〈サフィール3〉が、大気圏内に落下することなく、逆に高度を上げていることに気づく。シェアオフィス仲間である天才的ITエンジニア沼田明利の協力を得て、〈サフィール3〉のデータを解析する和海は、世界を揺るがすスペーステロ計画に巻き込まれて――
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
172
今年の読み始めは読友さん強力プッシュの本作で、藤井大洋さん初読み。正直言ってバリバリ文系に凝り固まった頭には最初の100ページ位は辛かった…言語の違う世界へ来てしまったようで、文章が頭の中で映像化してくれない…しかし200ページ頃から人物&事態も大きく動き出して面白さも判ってきた。宇宙と地球を舞台に、様々な立場の人々が交錯してサスペンスもドラマも急上昇…下巻が楽しみになった♪♪♪2018/01/04
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
107
初読みの作家さん。日本SF大賞、星雲賞も同時受賞と聞くと期待が高まる。2020年、イランが打ち上げたロケットブースターが地上には落下せずそのまま高度を上昇させるという奇妙な動きを示す。果たしてそこでは何が起こっているのか?その背後にあるものは?そして、これから何が起こるのか。全く展開を予想させないストーリー。続きがとっても気になります。テザー推進、ローレンツ力などなど物理用語も盛りだくさんですが、いざ、下巻へ。2016/06/16
つねじろう
82
そうSFはこうでなくっちゃ。科学的合理性とその先にある夢とロマン。法螺でもきっちり論理的整合性はあるのが大事。宇宙ゴミを追いかけ流れ星の情報をWebで流すメテオニュースの主宰木村和海。彼が気付いた奇妙な動きをするゴミがとんでもない事件を引き起こす発端となる。それは宇宙規模のテロ。CIAやら宇宙防衛軍やらJAXAやら北朝鮮や中国のスパイまでやって来て大事になってしまうお話し。それぞれの登場人物のキャラも立ってる。難しい宇宙の用語や理屈は出て来るけどそれはそれSFだと割り切れば何とかなる。期待を持って下巻へ。2016/07/30
パトラッシュ
72
未来世界で高度な科学技術の結晶ともいえる場を舞台に事件が起こり、解決する側もハイテクで挑む。小説や映画を問わずテクノスリラーでは常套の手法だが、そうと感じさせない波乱万丈のストーリー展開で読者を翻弄する。IT研究者にエンジニア、軍にCIAに北朝鮮工作員、大富豪とその娘など様々な登場人物が正義も悪もなく、ひたすら自分の仕事や趣味をやり続ける中にドラマが生まれる。全編を通じた主人公のいないポリフォニックな作品だが、あえて言えば「ネット時代」に否応なく包み込まれた人びとの声こそが主人公ではないか。(下巻に続く)2020/05/15
スカラベ
67
宇宙ゴミの不審な動きから端を発し、衛星軌道上で繰り広げられるスペーステロ。これに立ち向かう魅力のある登場人物たち。難解な専門用語も随所にでてきたり、空間把握力が求められそうな話ではある。でも、多少理解できなくても読み進むことのできる力を備えた小説。舞台が2020年というすぐそこの未来ということもあるだろうし、物語は次々と場面が切り替わるが、並行して進むそれぞれの話の骨子がくっきりとしていて、迷子になることは全くない。時折はさまれる、宇宙空間からのジュディの語りが勇を鼓されるようで心地よい。下巻に進みます。2016/06/11