内容説明
54帖からなる「源氏物語」には、題名しか伝わっていない“消えた一帖”があった!? 5歳年長の義母にして帝の妃・藤壺は、幼くて顔も覚えていない時に亡くなった生母・桐壺と瓜二つのように似ているという。切ない恋心をつのらせていく若き光源氏と藤壺の、許されぬ初めての逢瀬を、作家・瀬戸内寂聴が小説化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
87
源氏物語の題名しか伝わっていない幻の一帖を小説化したもののようです。幼くして宮に入った桐壺の更衣に瓜二つの藤壺。光源氏の切ない恋心が募り、やがて初めての逢瀬へとつながる物語はまさに禁忌のメロドラマのようでした。光源氏の立場では許されぬ初恋とその成就であるというのがタブーでありつつも美しく感じられます。巻末に原文が掲載されているのもいいですね。2017/07/27
syota
39
『源氏物語』冒頭の「桐壺」と「帚木」の間に当初あったと言われる(ただし真相は不明)幻の帖「輝く日の宮」を、瀬戸内さんが再現(創作)したもの。藤壺中宮に仕える王命婦と男女の関係になった上で手引をさせ、帝妃であり義母でもある中宮と交わるという二重の禁忌を犯してしまう光君の姿を描いている。先日読んだ丸谷才一『輝く日の宮』でも、丸谷さんがその一部を再現しているので、どうしても比較してしまう。/瀬戸内さんのものは、六条御息所との馴れ初めにも触れるなど「輝く日の宮」全体を再現しようとしているのが特徴だ。→2024/10/09
ちゃいろ子
31
森谷明子さんの千年の黙を読んでいて。 あ、私もまさにぼんやり読者だ、、、と。 そして、 かがやく日の宮!!!! で、こちらを。 丸谷才一さんの輝く日の宮も読むつもり。 かがやく日の宮という帖があったのか無かったのか。 源氏物語に一度でも触れると不思議な魅力に取り憑かれて何度も何度も読み返したくなるし、色々な解説書も読みたくなる。 遅まきながら私もその魅力に気づけて幸せだ。 2024/11/10
メタボン
29
☆☆☆☆ 源氏物語は未読だが、きっとこの幻の一帖には源氏物語の世界観が凝縮されているのだろうと感じた。まさしく「匂やかな」作品。古文も見事。2021/06/09
アルピニア
28
読友さんの感想を読んで手にした。源氏物語の謎のひとつ、題名だけが伝わる「かかやく日の宮」の帖を瀬戸内さんが「藤壺」と題して創作した物語。父の愛妻であり、帝の后である藤壺との逢瀬。人としても臣下としても許されない情事を描いている。源氏の罪悪感、高揚、驕りが見事に描かれていると感じた。源氏に翻弄されながらも彼への想いを抑えられない王命婦と藤壺の哀しい、悔しいうめきが聴こえてくるようだ。瀬戸内さんは怖い、そして瀬戸内訳源氏物語も読まねば、と思った。特に六条御息所の想いなど、どんな風に訳しているのか興味深い。2016/12/26