内容説明
蒸気機関を主な動力源とするメトロポリスに暮らす少女エマは、空中船《極光号》の船長である父を迎えるため港への道を急いでいた。船内の一室で、ガラス張りの“繭”に封じられた少年を発見し、解放してしまったエマは、彼と共に、その場に居合わせた名探偵ムーリエに弟子入りして都市で頻発する不可能犯罪を調べることになり……。夢溢れる空想科学世界を舞台に贈る傑作本格ミステリ!/解説=辻真先
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆかーん
52
『スチームパンク』というジャンルがあるのをご存知ですか?蒸気機関が発達する、1890年代を舞台にしたSFファンタジーのことらしいです。この小説はまさにスチームパンク!『電気エネルギー』が浸透していない時代のミステリー世界を堪能できます。主人公のエマと謎の少年ユージンが出くわす、蒸気都市での科学事件。バラバラだった4つの殺人事件が、新たな科学技術の力によって一つに繋がります。未来でもあり過去であるような、摩訶不思議な時代を十分に楽しめました!『天空の城ラピュタ』や『スチームボーイ』のような壮大な世界です!2016/11/13
ゆんこ姐さん@文豪かぶれなう
41
まあまあでした。エーテルと蒸気の世界のスチームパンクにはなかなか入っていくのが難しくて、密室のトリックなんかもよく分からんなーと思いながら読んでたんですが、謎の少年ユージンの出所と、エマとの関係とか、そのへん、ラストあたりは面白かったかな。2017/06/24
まりも
41
進路に悩む女学生エマ・ハートリーが空中戦で出会った謎の少年ユージンと共に、蒸気機関都市で続く不可能犯罪に挑む話。スチームオペラにミステリーが加わった感じの作品ですが、謎解きに関してはページ数割いた割に微妙だったので若干の肩すかしを食らった気分に。ちょっと強引すぎたのが残念だったかな。スチームパンクの世界を舞台にしたボーイミーツガールとしては楽しむ事が出来たので、謎解きはオマケ程度と考えた方が良いかもしれません。トータルとしてはそこそこですかね。次回作は要検討といったところ。2016/05/05
泰然
38
純粋に真っ直ぐで楽しいスチームパンク。舞台はバラレルワールドの倫敦で主人公のエマは父親が船長を務める空中船の一室で謎の少年に出会ったことから、校外研修として名探偵の助手になり活動するのだけども…。と、単純な空想科学とボーイミ-ツガ-ルと推理と思いきや、蒸気機関の道具や社会を克明に解説、又は実在の人物名を拝借して全力で描写することで痛快な「メタフィクション」的なラストへ繋げる。最近のSFは高尚で硬派な社会派文芸ポジションにはあるが、本書は奇天烈でファンタジックな本格ミステリの醍醐味の健在を示す夢ある一冊だ。2020/12/11
よっち
35
蒸気を動力源とした科学都市。進路に頭を悩ませる女学生エマ・ハートリーが長旅から帰還した父を迎えにきた港で正体不明の少年・ユージンと出会う物語。ひょんなことからユージンと共に名探偵ムーリエに見習いとして弟子入りしたエマが遭遇する数々の奇妙な事件。ミステリとして読むとやや冗長に感じたストーリー展開でしたが、思わぬ方向へ話が向かって物語を見る視点が変わるSF小説的な終盤は、強引かなと感じる箇所があったもののテンポも上がっていってなかなか面白かったです。二人の出会いの物語の終着点はわりと自分好みの読後感でした。 2016/05/01