創元推理文庫<br> ヴァイオリン職人の探求と推理

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創元推理文庫
ヴァイオリン職人の探求と推理

  • ISBN:9784488178055

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内容説明

ジャンニはイタリア・クレモナの名ヴァイオリン職人。ある夜、同業者で親友のトマソが殺害されてしまう。彼は前の週に、イギリスへ“メシアの姉妹”と言われるヴァイオリンを探しにいっていた。それは一千万ドルを超える価値があるとされる、幻のストラディヴァリだった。ジャンニは友人で刑事のグァスタフェステに協力し事件を探り始めるが、新たな殺人が……。虚々実々のヴァイオリン業界の内幕、贋作秘話、緊迫のオークション、知られざる音楽史のエピソード。知識と鋭い洞察力を兼ね備えた名職人が、楽器にまつわる謎を見事に解き明かす!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

441
2つの殺人事件を追うミステリーだが、実質的にはストラディヴァリをはじめとしたイタリアの古典的ヴァイオリンの名器をめぐる蘊蓄の物語。探偵役はクレモナのヴァイオリン職人ジャンニ。彼の犯人探索を通じて、ヴァイオリンの世界の魑魅魍魎を見事に描き出す。展開はひじょうにスリリングで物語としての妙味に富む。しかも、読者はヴァイオリンの世界の深さと狭さとを如実に知ることになる。幻の歴史的名器が音を出すシーンなどは、まさに鳥肌が立つほど。ヴァイオリン音楽を愛するすべての人に推薦!ちょっと他には類を見ないのでは。2017/09/14

ちょろんこ*勉強のため休止中

175
楽器についての薀蓄も多いが、どちらかというと過去と現在の絡み合う歴史ミステリ。ヴァイオリンの名職人ジャンニが職人仲間の友人を殺害した犯人を探す推理部分と、”メシアの姉妹”という名器を探す探求部分のバランスがよい。一気読みした。ジャンニは名職人だけあって観察力、集中力、洞察力が鋭い。フットワークも軽く、いわゆる名探偵としての資質を備えている。ヴァイオリン業界の流通、贋作についての秘話、オークションの緊迫感などもとても興味深く読めた。イギリスやイタリアの観光ガイド的記述や食事シーンが多いのも魅力。良作と思う。2014/06/19

こーた

143
よくできた虚構は、現実と区別がつかない。どころか、その嘘はときに本物以上に美しく輝く。殺人ミステリと、幻の名器のゆくえ。北イタリアの豊かな田園風景を舞台に、謎解きと宝探しに充ちた冒険を、音楽と工芸品が彩る。物語の弦ははげしく揺れ、ストラディヴァリの振幅と共鳴して美しい旋律を奏でる。完璧なヴァイオリンが観て愛でるためだけに作られたのではないように、美しい文章も巧緻に編まれた物語のなかでこそ、その真価を発揮する。読むものを煙に巻き、嘘のおわりとともに自身も煙となって消え去る。よくできた工芸品のような小説!2018/01/03

Panzer Leader

120
殺された親友の足跡を追っていくうちに幻のヴァイオリンの名器の探索の旅に巻き込まれる初老のジョヴァンニ。黄昏れた感じのこの主人公がいい味を醸し出している。ヴァイオリンを巡る歴史・蘊蓄話も興味深く読めて、まるで「ダン・ブラウン・ミーツ・ヴァイオリン」のようなお話。ミステリー部分は付け足し程度なれども面白く読めた。「最も屈強なイタリア人をも震撼させるもの、それはイギリス料理...」ってどれだけ不味いんだイギリス料理!2018/04/17

ユメ

111
冒頭、四重奏の選曲でトマソがブラームスを「猫の銛打ち」と貶し出したところで、早速「この本は面白い」と確信した(彼の意見には甚だ同意しかねるが)。探偵役の主人公が情熱的に語る音楽の薀蓄に耳を傾けると、心地良く好奇心を刺激される。彼が追うのはトマソを殺した犯人だが、推理の矛先はやがて死に絡んでいる幻のストラディヴァリへと向かう。魑魅魍魎が跋扈するヴァイオリン業界を掻き分けるスリル、増える謎、主人公自身の秘密が露見してしまうのではないかという危機感。そして何より、音楽史から自由に翼を広げて飛び立つ物語。→2015/04/15

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