内容説明
嘘いつわりが嫌いで、文士仲間から重症の正直病患者といわれ、世渡りが下手だった里見とん。明治・大正・昭和の文学界を悠然と歩み去った大作家初の本格的評伝。作品総覧、人物索引付。
よく、漱石や志賀直哉について、作品以前に人格を褒め称える人がいる。しかし私は、とんこそ、人格において褒め称えられる人だと思うに至った。何人もの女を愛したなどということは、とんの人格にとっての枝葉末節である。馬鹿正直というのが、とんの最も尊い人格である。とんの素行、書いたもの、いずれをとっても、徒党を組んだり、仲間のために嘘をついて作を褒めたり、卑怯な論陣を張ったりしたことはない。(本書「トンよ、トン――あとがき」より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Ted
3
'08年12月刊。△有島武郎・生馬の弟で志賀直哉や武者小路の親友だった作家の評伝。いい作品を書いているのに今では殆ど顧みられない作家の掘り起こしと、正直の上に二字がつくほどの生き方が自分と似ているのに共感したのが執筆の動機とのこと。クロニクルの羅列ということもあるが、やはりあまり有名でない作家の評伝は読んでも面白くない。忘れ去られた者をいくらリバイバルしようと抗っても、忘れ去られる運命に抗することはできないのだと思う。恐らく今後も再評価されることはないだろう。「死者は死者をして葬らしめよ」で十分なのだ。2016/12/25
kokada_jnet
2
94歳の長命を保った里見の人生を丹念に描いて、明治・大正・昭和を通しての文学史・文化史としての面白さはあるが。同著者の谷崎伝、久米伝と比較すると、里見トンという人物に、最後まで興味がわかなくて、困ってしまった。2012/03/06
Gen Kato
1
里見弴、読んだことないのにおもしろく読んでしまった(有島『或る女』は好きですが)。小谷野氏の評伝はすごくいいです。版元さんは続けて出してほしい。2024/07/02
山天
0
里見弴の伝記。長く生きただけあって、多くの人間との出会いと別れがあった。その中でも、くっついたり離れたりを繰り返す、志賀直哉との関係が不思議で印象的。あと東條英機の暗殺を目論んだとあったが、どこまで本気だったのか。2026/01/06
えんだーまん
0
美術評論家の福島繁太郎さんを 福島繁太郎(画家) と書いている箇所があった。
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