ちくま学芸文庫<br> 一揆の原理

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ちくま学芸文庫
一揆の原理

  • 著者名:呉座勇一【著】
  • 価格 ¥990(本体¥900)
  • 筑摩書房(2016/04発売)
  • ポイント 9pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480096975

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内容説明

一揆といえば、虐げられた民衆が農具や竹槍を手に極悪非道な領主たちに立ち向かう、そんなイメージを抱きがちだ。しかし、それは戦後歴史学が生み出した幻想に過ぎない。史料を丹念に読み解くなかで見えてくるのは、革命や暴動といった固定観念とはほど遠い、権力者とのしたたかな折衝のあり様だ。一揆とは、暴発的な武装蜂起ではなく、既成の社会関係では対応できない危機に直面した人々が「契約」によって生みだした、新たな社会的つながりなのだ──。これまで語られてこなかった一揆の実像と、現代の社会運動にまで連なる結合の原理を、新進の中世史家が鮮やかに解き明かす。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

68
一般書であり、東日本大震災後の様々な状況を見つつ2012年に上梓されたものなので、現代的視点がちりばめられているのが興味深かった。著者は戦後のいわゆる唯物史観的な研究と一線を画そうとする意識を持っているようで、特に「一揆=階級闘争」的な見方を排し、「一揆=契約」という視点を強調する。そこには権力打倒の意図はなく、それこそ労働組合の条件闘争的なものという見方は、かなりリアルに思えた。ただし自分が門外漢なので、本書にある論証がどのくらい「正しい」かは判断できない。コンパクトで読みやすく、色々学ぶことが出来た。2022/12/12

HANA

62
一揆というと蓆旗に竹槍。非道な代官の横暴に耐えかねた農民がブチ切れて蜂起するというイメージだが、完全にそのイメージを一新する一冊。一揆というものが何かという事を現代の出来事に重ね合わせて読み解いていくのだが、重ね合わせる部分は兎も角一揆については完全に目から鱗。支配体制の転変ではなく現代の団体交渉みたいな物ですよね。階級闘争史観だと物事が単純化されて世界が解りやすくなるけど、やはりイデオロギーが優先されると何の意味もない史観だなと再確認。何となく江戸時代の一揆より中世の一揆の方が躍動感溢れて面白いなあ。2019/10/29

壱萬参仟縁

34
2012年初出。一揆は権力者とのしたたかな折衝のあり様。既成社会関係で聞きに対応できぬ人々が契約で生みだした、新たな社会的つながり(裏表紙)。この新たな視点は貴重だと思う。既存の共同体から抜け落ちてしまった人たちが生きていくのが非常に困難なのが現代日本の最大の問題(014頁)。竹槍と蓆旗(むしろばた)は百姓一揆の象徴(028頁)。一揆に対して嗷訴(強訴)で非武装・対話を基本姿勢とする(045頁)。2016/03/05

白義

26
一揆といえば竹槍を持った百姓の反権力闘争、なんてのは大間違い、とばかりに、人と人が自由に繋がり、強かにパフォーマンスや宣伝戦略を組み込んで権力と交渉した中世一揆のダイナミックな世界を描き出している。互いに助け合うというシンプルなつながりの原理が一揆の本質であり、それゆえにたった二人の一揆すら存在する、という知識の面白さに、それをゲームのいっきと絡めたりする文章の軽さ、網野史学だろうが唯物史観だろうが気楽に茶化してしまういい意味でのチャラさが冴え渡っている。時事問題リンクは古いがわかりやすさでは成功している2020/04/21

サケ太

24
非常に面白い。“一揆”という言葉から想定していたものと、違う姿が浮かび上がってくる。時代によっての常識や秩序が存在することや、中世の人々のバランス感覚というものが知ることが出来る良書。“一揆”という「人のつながり」。その基盤となった時代ごとのルール。現代のSNSなどのソーシャルメディアによる人とのつながりについても言及があり、考えさせられる。一揆=暴力、もしくは反権力が本質ではない。中世の人々が出来たつながりの形成の大事さや必要性を見た気がする。2020/04/05

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