内容説明
おれはなぜ二度も人を殺したのか。七十六歳で故あって二度目の殺人を犯し四年、いま獄中にある男は静かに語り始める。昭和初頭、炭鉱の島に生まれ坑夫となった緒方一義は隣人を殺し、一度目の獄につながれた。彼が手にかけた男の妻と交わし続けた手紙にこめた想いとは? 遠ざかりゆく昭和という時代と数奇で凄絶な人生が見事に描かれる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ももんが
23
★★★☆☆七十六歳で二度目の殺人を犯した、緒方一義。彼はなぜ二度も殺人を犯さなければならなかったのか•••八十歳になる彼がそれまでの人生を語る。重い•••私には重い作品でした。炭鉱場や炭坑夫、仕繰方、採炭方、掘進方。イメージがなかなか掴めませんでした。でも、読み進めていくうちに緒方一義の一途な想いや皮肉な運命に辛く苦しいなりました。もっと違う道があったのではないのか、なんで、なんで、とやるせない想いのまま読了です。2016/07/02
JKD
6
緒方一義という恐ろしく真面目でネガティブな殺人者の赤裸々な告白の中にドラマティックな要素がふんだんに盛り込まれているので飽きさせない。途中に出てくるベッタベタな長崎弁や時事ニュースもあり、不幸すぎる話だけど嫌味なく純粋に楽しめました。2016/04/10
ねぎまぐろ
1
★★2025/03/25
triple_port
0
主人公が世間の不条理に巻き込まれ、抗いながらズルズルと落ちていく展開、勝目梓作品の真骨頂と思う。2024/09/01
myvi
0
妻にもらった。長崎の炭鉱街で育った男が、青春期と老年期に人を殺すのだが、きっかけとなったのはいずれも同じ人である。戦中戦後は治安も悪く簡単に人を殺す時代だったと事件史のようなものを読んでも感じるが、そういう世代にあって1回目と2回目の間はひっそり暮らす男は、本当に歯車が狂ったというかボタンのかけ違えというかで、なんとも切ない。ネットの評価は賛否両論あるようだが、個人的には朴訥とした語り口を含め面白いと感じた。2023/02/21