内容説明
『逝きし世の面影』の著者渡辺京二は、日本近代史の考察に、生活民の意識を対置し、一石を投じてきた思想家である。その眼差しは表層のジャーナリズムが消費する言説の対極にある。本巻には、西欧的な市民社会の論理では割り切ることのできない、大衆の生活意識にわだかまる「ナショナル」なものを追求した「ナショナリズムの暗底」、明治国家への最大の抵抗者としての西郷隆盛を常識的定説から救抜する「逆説としての明治十年戦争」、北一輝と日本近代の基本的逆説の関連を問う「北一輝問題」など、日本近代史を根底から捉え返すことを試みた論考を集成する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
i-miya
35
2011.10.16 (編集=小川哲生) (カバー) 『逝きし世の面影』の渡辺京二。近代日本史考察に生活民の意識を対置、一石を投じてきた思想家。西欧的な市民社会の論理では割り切れぬ、大衆の生活意識にわだかまるナショナルなものを追求した「ナショナリズムの暗底」。明治国家への最大の抵抗者としての西郷隆盛「逆説としての明治十年戦争」。「北一輝問題」など。 2011/10/17
COPPERFIELD
13
P41 明治国家の創出者たちの意識のうちにあっては、天皇制とは近代的市民社会国家への過渡である明治国民国家の分裂的構成要因を統合するひとつのフィクションであった。明治維新はもとより封建制の絶対主義的再編成でもなければ、たんなるブルジョワ革命だったのでものない。それは国家による資本制の創出という特異な任務をになった革命であって、その特異な性格にどういう社会経済史的範疇をあてはめてよいかわからなかったところに「資本主義論争」の混乱があった。 →2014/10/31
勝浩1958
8
とても刺激に満ちていて知的好奇心を満足させてくれる評論集である。といいながら果たしてどれほど理解できたかは甚だあやしいかぎりだが。西南戦争における西郷隆盛の不可解な行動への渡辺氏の理解は、通俗的歴史観をばっさりと切り捨て、司馬遼太郎の『翔ぶがごとく』をも「小説として見れば、これまたスカスカである。」とこき下ろしている。私は歴史に疎いのだが、渡辺氏の説には妙に説得力を感じでしまう。それは、私に歴史の新たな面を知らしめてくれるからだろう。2013/02/23
HANA
8
明治維新から太平洋戦争までのナショナリズムやこの国のあり方についての論文を収録。第一章は主に明治の思想家についてであるが、ここで初めて耳にする思想家の多いこと。自らの不勉強を恥じ入るばかりである。ただ2・26については興味深く読む。第二章は維新の元勲についての記述。特に西郷隆盛、維新以前の死者と南島体験が彼に与えた影響、特に後者はいままで読んだ維新論でも触れられていなく興味深く読めた。2011/07/19
chanvesa
6
北一輝や西郷隆盛を軸に日本の近現代史に思考を巡らせていく。西郷については、なんだかよくわからない人という上に、渡辺京二氏が鮮やかに否定していく誤った西郷解釈と同じ漠然としたイメージを持っていたが、一蹴された。実証の鮮やかさと説得力。北についてはこの本のいくつかの小論だけでは、理解しきれなかった。『北一輝』をぜひ読んでみたいと思う。渡辺氏がこの本の中のどこかでご自身を「アマチュア」と書かれていたが、固定化されたスタンスからではなく軽やかに思考を巡らせる自由さのことを言われていると思う。2013/04/06
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