内容説明
ヴィレムは約束を守れず〈月に嘆く最初の獣〉(シヤントル)の結界は崩壊した。正規勇者(リーガル・ブレイブ)の命と引き替えに長い眠りについていた幼い星神(ほしがみ)は、その余波で空魚紅湖伯(カーマインレイク)とはぐれ、記憶を封じられたびれむと共に仮初めの平穏な日々を過ごす。その日、〈穿ち貫く二番目の獣〉(アウローラ)が浮遊大陸に降り注ぐことになるまでは――。〈獣〉に対するのは、アイセアとラーントルク。死にゆく定めの少女妖精たちと青年教官の、終末最期の煌めき。次代に受け継ぐ第一部、幕。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
θ(シータ)
136
「くとりは、わたしなんだ。でもわたしはくとりじゃない」まさにこの作品に相応しい最後であり最期でした。この終末が果たして"救われたか"は読者の解釈次第かもしれませんが。ストーリーはバトル展開続きではなく淡々と切なく進んでいきます。星神とは何か、黄金妖精の正体など少しずつ伏線が回収され謎が明らかに。そして、〈獣〉となってしまったヴィレムとネフレンの動向。それに対するアイセア達の心情にも注目です。青年教官と少女妖精の、儚くも輝けるーー輝いた日々はかけがえのないものであったことを願う。星5【⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️】2016/04/06
まりも
70
死にゆく定めの少女妖精と青年教官の物語の5冊目。正規勇者の命と引き換えに永い眠りについていた幼い星神と、記憶を封じられたびれむの仮初の平和を描いた話。あー、もうホンマにあかん。涙腺を刺激されるのは覚悟していたけど、我慢するのが難しいくらい心を揺さぶられました。終末最後の煌めきとなる平穏で穏やかな日常の数々、青年教官から妖精少女達へ与えられた最後の贈り物、その全てが最高に素晴らしくて、この物語に出合えて良かったと心の底から思えました。次代に受け継ぐ物語に相応しい結末だったと思います。第二部も期待大。2016/03/31
よっち
61
ヴィレムは約束を守れず〈月に嘆く最初の獣〉の結界は崩壊、正規勇者の命と引き替えに長い眠りについていた幼い星神が、記憶を封じられたびれむと共に仮初めの平穏な日々を過ごす第五弾。師匠の意外な正体と命と引き換えに星神を封じたリーファ、そして明らかになる妖精少女たちの正体。獣と関わったことでありようが変わってしまったヴィレムとネフレンが、それでも立場が脅かされつつある少女のために奔走する姿がとてもらしくて、世界が終わりに向かう中でも救われた場所があったことにホッとしました。そんな思いが受け継がれた第二部にも期待。2016/03/31
雅
56
儚い。切ない。でも悪くない2023/03/09
niwaniwatori
51
行かなくてもいいと言われた戦いに、自分の意志で向かう者たちの物語。素晴らしい終わり、としか言えない。なんだかんだで全員が生き返って幸せに暮らしましたエンドを求めている読者も多かったはずなのに、そうならなかった。作中で言われている通り、彼らの物語は彼ら自身の足跡を追いかけて、行きついた場所で終わった。いつ終わるのかもわからない世界の中で、全てを次の世代に託して眠りにつくという言葉の、どれだけ尊いことか。大好きなシリーズを最後まで大好きなシリーズとして読めたことにとにかく感謝したい。2016/04/03