内容説明
帰りの遅い父を待ちながら優しく甘い夢を紡ぐ孤独な少年の内面を、ロマネスクな筆致で綴る「夢みる少年の昼と夜」。不可思議な死をとげた兄の秘密が、やがて自己の運命にもつながっていると知った若い女性の哀れ深い生を描いた「秋の嘆き」。ほかに「沼」「風景」「幻影」「一時間の航海」「鏡の中の少女」「死後」「世界の終り」「死神の馭者」「鬼」など、意識の底の彷徨を恐ろしいほどに凝視し、虚構の世界にみごとに燃焼させた珠玉の短編全11編を収録する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナマアタタカイカタタタキキ
29
“草の花”や“忘却の河”のイメージで臨んだところ、かなり趣向が異なり驚いた。 浅い眠りで見る辻褄の合わない夢の如く多分に幻想的で、恐ろしいとは感じつつも、思わず反芻せずにはいられないような魅力を秘めた作品ばかりだった。 そんな夢幻と、対して現実的視点との境界もはっきりしていて、それがより一層対比を際立たせている。そういう意味でも表題作が一番印象的かも。 2025/02/18
恋愛爆弾
15
衝撃的な名篇「世界の終り」が、こんなにつまらない他の作品の巻末に収録されていることはある意味日本文学史上の不幸というべきか。それは小説というより、無限に遠ざかる未来からの暗号文書であった。「ここからずっと送ってる暗号を/君はまだ解読できてない」(宇多田ヒカル『Can You Keep A Secret?』)。中学生のときに「世界の終り」を初めて読んで、見渡せば世界の終りのような夕焼けのなかで、私のすべてはこの作品のためにあったような気がした。受信したのだ。そしていまもしている。それはそこにある。私は見る。2023/09/07
ジュンコ
15
少年、精神分裂の女性、哲学者…いろいろな人物の心情を描いた短編集。それぞれの日常の一部が切り取られているのだが、それが退廃的で、幻想的で、現実と虚構の淵をさまよう感じ。表題作のラスト、鳩時計の「クックウ」の繰り返しが印象的。2017/04/30
アマヤドリ
11
やわらかなのにしんとした絶望がどこかにある。雨の日に読んだから余計、かもしれない。2011/05/10
月
9
妻の蔵書より一冊。絶版ものは古書買いせざるを得ないが、こういう場合非常に助かる・・福永は他にも数冊あるようだ。短編11編収録。表題作は、少年の幻想と現実の交錯、汚れのない世界(大人には失われた世界)、誰もが一瞬だけ通り過ぎる世界(時間)を映し出している。又、モノローグの引用により主人公の内面(心・夢・深層心理)がよく描かれており、本人も気づいていない傷ついた少年の心理、純粋な切なさのようなものが読後感に残る。当時の文壇では今一つの評判だったようだが、他にも数編良い作品がある。 2014/08/18
-
- 電子書籍
- 闇金ウシジマくん【タテカラー】 サラリ…
-
- 電子書籍
- じょっぱれアオモリの星【分冊版】 10…
-
- 電子書籍
- ガードナー不思議の国のパズル百科
-
- 電子書籍
- 涙の婚約指輪 ハーレクイン
-
- 電子書籍
- パリの美術館で美を学ぶ - ルーブルか…