内容説明
眠れぬ夜、くりかえし耳に響くメロディー。あの時、ビートルズはぼくたちと共にあった。そして、ビートルズと共にあの時代は去った……。TVタレント、深夜放送のDJ、コメディアンなど、華やかなマスコミの世界の表層に漂いながら、本当の自分を探しあぐねている男たち――。その虚実を写しだして、ビートルズと共に生き、共に去った時代への挽歌を奏でるオムニバス長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
S.Mori
26
マスコミで働く男たちを主人公にした連作。華やかな業界の中にある虚しさや悲しみをさりげなく浮き彫りにする良作揃いです。DJを主人公にした「金魚鉢の囚人」が特に好み。中学生や高校生の時に、夢中でラジオを聞いていた頃を思い出しました。孤独な若者たちと、彼らよりさらに孤独なDJテディ・ベアがラジオの電波のみでひとときの間だけつながります。刹那的な結びつきですが、多くの人たちの救いになったことを巧みに描き出す作者の感性に、強く惹きつけられました。やり切れないことが起こる結末の苦さが絶品。みんな孤独なのだと思います。2020/08/10
mawaji
5
実家のテレビの裏側で埃に塗れていたのを手に取りました。裏表紙の見返しに100円の値段が書いてあって、たぶんタイトル買いした古書かと思われます。60年代から80年代初頭にかけての華やかなマスコミの世界の裏側をビートルズや深夜放送、コメディアンなどその時代を代表するアイテムに絡めて繰り広げられる4編はとても懐かしい思いで読み進みました。インターネットのない当時はラジオの深夜放送が必要不可欠で、「金魚鉢の囚人」ではパック・イン・ミュージックの第二部を眠い目を擦りながら聞いていた高校生時代が思い起こされました。2013/01/02
志波昌明
4
1960年から1980年ごろまでのテレビ、ラジオ業界を舞台にした連作の短編集、と書くと華やかな小説みたいだけど、社会に違和感を持ち、安易に合わせることなく、孤高に生きていく中年の男性を主人公にしている。萩本欽一を思わせるコメディアンが出てくる「踊る男」、深夜のラジオのDJが主人公の「金魚鉢の囚人」が良かった。2015/02/25
カンパネルラ
3
4つの短編中編からなっている、最後の1編が、其々つながりのない前の3編の主人公を登場させてまとめている。おおよそTV・ラジオ・映画のクリエイティブな所を舞台に、1960-1980までの時代をうまく描いている。全体的に疲労感が漂う文体は予想外だった。2007/07/14
けいちゃっぷ
3
そういえば高校の同級生でビートルズの熱狂的ファンがいたな。そのおかげで私は引いてしまったがw