内容説明
頬に傷痕のあるお吉は押しも押されぬお狂言師。お小人目付けの日向新吾と互いに想い合う仲だが、日向には縁談が持ち上がる。弘化五年、赤坂御門外での事件から、将軍の寵愛をほしいままにしているお琴の様方をめぐる、女子同士の色模様という、面妖な企てが浮かび上がってくる。はたしてお吉の想いは届くのか、そして大奥の謀議は明かされるのか。文字通り我が身を削って書き継いだ著者渾身の遺作、抜群の面白さ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
102
噛みしめて読了した。好きなシリーズだったのに、貴女はもういないのですね。結末の構想があったようで、まさか!の想いもあるが、それはそれで読んでみたかったな。ただただ惜しい!例えたった一夜を妻から奪ってもそれだけでその後を生きていける・・嗚呼、お吉が愛しくてならない。やはり、結婚を勧めた新吾の姉を恨みますよ。お吉のお師匠がまた好きなタイプで、この先の展開が本当に楽しみだったのに・・『のに』が付くと『愚痴』になるが、あと少し生きていて欲しかったがこれも定めか。だが私の中ではいつまでも生きている。2016/04/03
れみ
100
お狂言師の歌吉こと駕籠屋の娘お吉の登場するシリーズ4作目。大奥とお狂言師の世界をめぐって起こる事件。大きな権力や欲望の前にひとりのお狂言師の恋や夢があっけなく潰えてしまう哀しさ。そして、お吉と日向のもどかしい恋模様が日向に持ち上がった縁談によって大きく動く展開。昨年末に杉本章子さんが亡くなられそれまでに読んでいた3作目で終わりなのかと思っていたので続きが読めたのは良かったけどあと1話で完結だったとは。惜しかったなあ。他のシリーズとか過去のものを機会を見つけてまた読もうと思う。2016/05/03
baba
51
杉本氏の遺作をついに読み終えてしまった。大奥がらみの探索よりお吉と日向のやるせない相手を想う気持ちに涙しながら読み、人前でなくて良かったと思うほど切なかった。それにしても「ふくら雀は家紋にござる」で二人の明るい行く末が見えたように思えたが、氏は違う構想があったようで読めないのが残念。巻末の文章がさらに哀しみを誘う。2016/07/21
優希
39
切なかったです。未完なんですね。最後まで描かれたらどのような物語になったのでしょう。2024/03/01
星落秋風五丈原
35
著者遺作。日向が結婚してしまったが紆余曲折の末結ばれそうな所で終わっている。といちはいち事件も途中。加賀まりこさんの文章巻末にあり。2016/03/19