内容説明
クラシック音楽は、日本ではいつからか「癒しの音楽」と喧伝されるようになった。だが、本質はその対極にある。死、神、孤独、戦争、国家権力――。こうした「恐怖」こそが、偉大な音楽家たちを駆り立ててきたのだ。モーツァルトからショスタコーヴィチまで、「恐怖」をキーワードに辿る、異色の西洋音楽史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
流之助
15
「怖い」の感覚は人それぞれではあるが、この本では楽曲の何が怖いのかをその時代背景を中心に書いている。モーツァルトからショスタコーヴィチまで、全作曲家を網羅することは無理であっても、音楽史を通じて何の影響を受けてその曲が作られるに至ったか、思いをめぐらせながら読んだ。作中に列記された楽曲をYouTubeで再生しながら少しずつ読み進めたが、やはり名曲。聞き惚れて読み進められないことも多かった。2023/08/30
toshi
12
怖いというよりも不協和音などで不快な気持ちにさせたり、マイナーで暗い曲調の作品を切り口にした音楽史。 あまり恐怖ということにこだわらないで単純に作曲家の物語として楽しく読める。2016/03/07
Syo
11
実は、クラシックにも 何度、挑戦したことか。 マイブームも 何度もあるんだけど…。 ちょうど、レイザーディスク のライバルのオフコースの 解散コンサートを思い出し、 楽天でDVDを買ったとこ。 アマデウスも 持ってるのよねぇ。 の、モーツァルトから。 あぁあれね。 で、ベートーベン。 田園ね。 なるほどね。2016/05/04
マカロニ マカロン
8
個人の感想です:B+。クラシック音楽は「癒し系」と言われるが、実は「地震、雷、火事、親父」に代表される怖いものをテーマにしたものが多い。戦争や死は大きな主題でもあった。モーツァルトの『ドンジョバンニ序曲』から始まり、ベートーヴェン『田園』、ベルリオーズ『幻想』、ショパン、マーラー、ワーグナー、ヴェルディの『葬送』や『レクイエム・怒りの日』等など、YouTubeで曲を確かめながら読んでいくと、今まで何気なく聞いていた曲に潜む『怖さ』に気付かされた。また、作曲家の生涯や恋愛、病、死という生涯も興味深く読めた。2016/12/11
Decoy
7
中川右介による、ものがたりで読む音楽史。いつもながら、すこぶる付きの面白さ。“怖い”がテーマでありながら、著者もあとがきで書いているとおり、「きわめてオーソドックスな音楽史」になっているところが興味深い。とはいえ、ヴォーン・ウィリアムズやブリテンに多く紙幅が割かれていたり、ショスタコーヴィチでまるまる1章使っているあたりは、独特かも。2016/05/05