内容説明
ある日知人のリサイタルの切符を売り歩いていた音楽大2年の仁木悦子は、かつて先輩の家で何度か会ったことのある有田絵美子に呼び止められた。今は国近という姓に変っている彼女は、悦子が事情を話すと切符を買ってくれた上、家族にも奨めてみるという。彼女の好意に甘え、悦子は田園調布の国近家まで同行することにした。絵美子には二歳半になる直彦という神経質な男の子と、マユミという女の赤ちゃんがいた。だが絵美子の夫・昌行は、なぜか直彦にだけ極端に冷淡だった。そしてこの日も一悶着あった直後、直彦が何者かに誘拐されてしまった……。仁木雄太郎、悦子の兄妹名探偵の活躍を描いた傑作長編推理。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
59
仁木兄妹シリーズ。「日本のクリスティ」らしい誘拐ものの名作で、家族模様がとてもきれいに描かれています。ちょっと解決篇は物足りない部分がなくもないですが、現代性もあわせもった良い作品です。2021/02/04
みみずく
17
仁木兄妹シリーズ。悦子の古い知り合いの2歳の息子が誘拐される。心配で倒れる夫人と全く他人ごとのような夫。身代金の受け渡しにしぶしぶ向った夫だったがまた新たな事件が発生する…。 頭脳担当の兄雄太郎と行動力の悦子のコンビが相変わらず良い感じ。登場人物が多くて起こる事件も増えてどうなるかと思ったけれど、スッキリと収まった結末だった。手足が少し不自由な女の子のエピソードなど脇の登場人物も印象的だった。ただ、「ズベ公」など当時の言葉遣いや、際どい表現に時折驚かされた。2015/01/30
kinshirinshi
14
仁木兄妹シリーズ長編四作目。ある資産家の家で起きた誘拐事件に、雄太郎・悦子兄妹が挑む。溌剌とした主人公二人に対し、犯人がことごとく利己的で嫌なやつなのは、このシリーズの特徴かもしれない。また、素人探偵が他人に猜疑心を抱かれずに(警察にも黙認されて)自由に活動できるあたり、書かれた時代のおおらかさを感じる。 このシリーズの長編は、残念ながらこれで最後。事件に思いを馳せ、「人間というものがひどくはかなく思えてやりきれなかった」と呟きながら、平凡で楽しい日々に戻っていく悦子の姿に、優しい気持になって本を閉じた。2022/02/12
ベッシー
4
仁木兄妹シリーズ。とある社長宅の幼い息子が黒いリボンを名乗る犯人に誘拐される場面に出くわしてしまう。いつものように兄を巻き込んでその解決と、更に出くわす事件の謎を追う。なかなかに込み入った内容と時代背景ではあったが読みやすい。2023/12/16
はんく
4
実に堅調な本格推理小説でした。女流にありがちな情念描写や心理サスペンスに陥ることなくあくまで知的に明るく読み心地のよい「推理」小説になっています。誘拐事件からの身代金受け渡しそして殺人事件といった一連の流れが割合あっさりと描写されていて(仁木女史以外なら誘拐された母親の心理や家族の軋轢、身代金受け渡しのサスペンスをもっとウエットに描いたところかも知れないが)決して論理的ではないもののあくまでも知的推理小説としてのドライな情報提供に徹していてその特殊性が仁木悦子を特別たらしめていると思う。2018/04/09
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