内容説明
治療が非常に難しいといわれる「境界性パーソナリティ障害」を克服した当事者と精神科医の対談。 当事者ならではの疑問に答えながら、誰もがかかりうる「絆の病」の本質と回復への道のりを明らかにしていく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Takanori Murai
35
自分を愛せず消し去りたい、境界性パーソナリティー障害。医師がさじを投げる難題を、克服した体験談。親との関係が不安定であることが原因として最も大きい。愛着を受けられない「絆の病」なのだと。医療体制の不備もあり、精神科を受診すれば即おO.K.とならないのが現状。いい先生に出会う、もしくは素直に先生に委ねられるようになるまでには時間がかかるよう。家族やパートナーの協力なしには、克服するのは困難なようだ。「生まれなおしの儀式」いいですね。愛情を受け、自らも愛情を注げるとうになるのが克服への道なのだろう。2020/07/14
ちゃちゃ
17
医療少年院で罪と病という二重の試練を背負った子どもたちの姿を取りあげた『悲しみの子どもたち』という新書に、十年ほど前に出会い大きな感銘を受けた。それ以降、著者で精神科医の岡田尊司さんを追い彼の著作を読み続けてきた。本書は、境界性パーソナリティー障害を克服した咲セリさんと著者との対談を軸に、要所にコラムという形で解説を加えた一般読者向けの著作である。この障害を「愛着障害」という視点から分析し、愛着を安定化させるために周囲の人が「安全基地」になることが鍵だと説く。生きづらさを抱えた人や周囲の人への希望の書。2016/03/27
銀の鈴
14
セリさんの場合は、旦那さんとの出会いに恵まれました。しかし、多くの傷ついている人は、自分を大切にしなかった異性の親と似た人を引き寄せ、その時に得られなかった愛情をなんとか獲得しようと虚しい悲しい格闘を繰り広げて終わってしまう人生のほうが圧倒的に多い。幸福なるセリさんの回復の具体的な方法も書かれていて、それは良いなと思いました。薬物依存とは、依存先がない人間が、物質に依存するのだ、と熊谷氏も言っていますが、近年は社会が愛情に枯渇して病んでいると思いました。2019/02/09
はじめさん
12
10代の頃から境界性パーソナリティ障害を患い、克服した咲セリさんと、岡田先生の対談がメイン。絆の病とは、生まれ育った環境があまりよろしくない(家族関係の希薄化)=絆がないのを契機に、様々な精神疾患を発症すると述べられる。本来はお医者さんも1人の患者さんと1時間以上向き合っていたいが、それだと経営なり立たないジレンマとか、大変ですね。/ 岡田先生は香川県出身。東大哲学科中退→京大医学部。まさかの転理通り越しての転医。医療少年院勤務などの経歴。/ ポプラ文庫はじめて読んだけれど、中学生の新書デビューに最適?(2016/09/14
カッパ
9
「大人になってもうまれなおせるし、自分を愛しなおせるしやりなおせるんだなあ」という咲セリさんの言葉が心に残りました。魅力的で良いところを沢山もつこの境界性パーソナリティ障害。昔は治らないとされていたのもわかります。でももう一度取り戻せると知って救われた気がします。でも育て直し生まれ直しだけあって息の長い支援や諦めないことが大切なんですね。2021/10/07