内容説明
深夜、銀幕のような濃霧のたちこめた西部イングランドの荒野に、忽然と姿を現わした怪物。らんらんと光る双眼、火を吐く口、全身を青い炎で燃やす伝説にまつわる魔の犬は、名家バスカヴィル家の当主ヘンリ卿を目がけて、矢のように走る――。きわだった叙景によって舞台となる特殊地帯を一種の密室のように仕上げ、息づまるばかりの緊張を生む、ホームズ物語中最大の長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
581
子供向きではないホームズを読んだのは初めて。今までミステリーに耽溺するという時期がなかったせいだ。これが古典的なミステリーというものなのだろう。万事に古めかしいが、言葉を代えて言えば古典的な格調ということになる。構想の核となるバスカヴィルの犬にはいささか無理を感じるが、そういうものとして読むならば目くじらを立てることもない。「この世のものとも思われぬ巨大な、真っ黒な猛犬」といった大時代な訳文もご愛敬か。なお、ダートムアを背景に描き出される物語世界の定位が本書の最大の成功か。ホームズ、ワトソンの造型以上だ。2015/08/15
遥かなる想い
373
『名探偵コナン』を見る ことはあっても、 元祖コナン・ドイルの本を 読むのは本当に久しぶりで 「ホームズ君」「ワトソン君」 のやりとりが素直に嬉しい。 1901年に書かれたこの本、 ホームズ最長編だが、 懐かしさからか、飽きさせ ることがない。 チャールズ・バスカヴィル 卿変死から始まるこの事件 ワトソン君の奮闘が 目立つが、ホームズが 登場すると、一気に解決。 揺るぎない自信と推理は 本当に頼もしく、 名探偵物の醍醐味である。2015/07/26
Die-Go
235
一人シャーロック・ホームズ祭り第6弾。聖典。再読。四つの長編のうちの三つ目。やはりホームズものは推理やミステリーよりも冒険活劇としての色が濃い。そこがいいのだが。ワトスンの活躍多目。面白く読めた。★★★★☆2016/04/09
Tetchy
210
初めて読んだのは確か小学4年生の時、同書の児童版『呪いの魔犬』という題名だった。が、やはり30代半ばを超えた現在では本作を愉しめるほど純粋では最早なく、内容的に陳腐な印象を受けたのは否めない。ただ、島田荘司のミステリに対する姿勢~冒頭の幻想的な謎を結末で論理的に解明する~の原点であるとの認識を新たにし、この作品の影響を多大に受けていることが判り、興味深かった。2009/05/20
青葉麒麟
158
此の小説を読むとワンコが嫌いに為る。でも自分本意の人間のせいで犯罪の武器に為る様に調教されるワンコは可哀想過ぎる。2011/07/11