内容説明
大洋銀行から大手ゼネコンの東和建設に出向して、社長の秘書役に抜擢された山本泰世。若さに似ぬ直言ぶりは、竹山総理を後ろ盾に世界的なホテル・チェーンの経営に乗り出すワンマン社長の信頼を得るが、公共事業の入札やゴルフ場の開発では業界の闇の深さを思い知る。バブルという時代の内実に迫る意欲作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
285
ボード陣の醜い社内政治と、なんとなく出来る風味なミドルの、その雰囲気だけを楽しむもので、それ以上は何も期待出来ない。内容はとにかくスカスカ。主人公山本が、いやに社長に気に入られているのに、読者からは仕事ぶりがさっぱり見えず、社長室を出たり戻ったりするだけ。幕切れも唐突で、あまりにも一瞬で社長が心変わりする様は、書き続けるのが面倒になったか、週刊少年ジャンプ級の連載打ち切り宣告があったのではと勘繰ってしまう。ゼネコンのゼネコンたる部分の描写は一切なく、何の会社を舞台にしても問題ない。2020/05/19
しおつう
24
池井戸潤の小説同様、実話なのだが固有名詞は程よく変更されており、それを解明していくのがまた一興。2000年に刊行された本書の中に、一瞬ではあるが、これは実名でトランプ大統領が不動産王として登場するのも面白い。大手ゼネコンと都市銀行の微妙なやり取りが進められる中、この当時、優良企業ともなれば貸してもらうというよりも借りてやってるという立場に立てた。今では銀行の貸してやっているという態度の方が目立つのかもしれないが…。2017/11/24
Sachi 改め「ユーミー」
11
「広報室沈黙す」が面白かったので続いて読んだ。こういう手の小説は私の本棚には余りない。娘の本棚からこそっと拝借した。たまにはこういう本も良い。 この人はテンポ良くとても読みやすい書き方をする。 難しい人間関係をさらりとかわして、うまく立ち回る主人公に好感が持てた。高揚感はなく淡々としているが、やり取りが不快なくじつに面白い。バブル寸前で話は終わってるが、その後を考えると興味をそそる、想像出来るところに余韻を残す。2015/01/10
y_u
5
準大手のゼネコンに出向し、社長の秘書となった銀行員の物語。取締役にはメーンバンクやサブメーンバンク等々の銀行からの出向者も多く占め、前半では貸出金額をどの銀行が出すかという問題で大きくもめる。普通なら金利が安いところから借りるはずなのだがそうではない。過去からメーンバンクを務めていたとか、いい案件を紹介したなどメンツも絡み話は複雑に。最後に、銀行からの出向した取締役たちがうまく話をまとめるが、いかにも日本企業らしさがでている。秘書となった銀行員は最後に社長の不興を買い、出向が解かれる。一寸先は闇か。2017/02/05
薦渕雅春
5
大洋銀行 企画本部調査役の 山本 泰世 は 準大手のゼネコン 、東和建設 に出向となる 。ズバッと意見を言う 山本は 東和建設社長の和田の信頼を得る 。時代設定は昭和62年から 、この年は私が社会人になった年でもある 。後にバブルと言われる好景気の走りだった頃か 。東和建設は 本業の建設業だけでなく 、海外のホテル事業へも進出し業績は上り調子 、終盤にはゴルフ場開発も手がけようとする 。関西国際空港の工事に伴う談合の問題が発生する辺りで物語も終盤を迎える 。企業は人なり を考えさせてもくれる小説だった 。2015/09/27