内容説明
上田美由紀、35歳。小柄で肥満、鳥取のスナックのホステス。彼女の周りで6人の男が死んだ。この事件の背景には、木嶋佳苗事件とは別の深い闇がある。――美由紀に騙されたのは、あなたかもしれない。筆者は鳥取に通い、美由紀と面会し、彼女に騙された男たちに取材を重ねる。木嶋佳苗が獄中ブログを始めるきっかけとなり、「私の事件を取材してくれていたら…と思い続けたジャーナリスト」と言わしめた一冊が文庫化!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
135
「場末のバーみたいな…」と言う時の「場末感」を初めて体感した気がする。これほどのものとは。被害者の男たちのいた世界は、そこではなかった。しかし、彼らは自らの世界ではすでにはぐれていて、だからこそ罠にかかったのではないか。そしてそこに居場所を求めた。愛していると熱を込めて言われ、全身で頼られることは人生にそうはない。だからそんな言葉にすがり付く男や女がいるのだろう。美由紀はオンナ女衒だ。最後の、木嶋佳苗も含めた3人の応酬は醜い。作者が最後にそれに気付くのが救い。命の価値が分からなくなる生活の荒みが凄まじい。2017/07/21
yumiko
69
2009年鳥取で発覚した男性ばかり6人の連続不審死事件。同時期に逮捕された木嶋佳苗の影に隠れ、正直似たような事件との印象だった。性悪女に騙された馬鹿な男達の話かと、半ば決めつけていたところもあった。しかしこの一冊を読む限り、闇の深さは想像を超えるものだった。男と女、都市と地方、富者と貧者…決して紋切り型の対比として書かれているわけではない。けれど自分の知る世界とのあまりの落差に、眩むほどの恐ろしさを感じてしまった。おそらく真実は永遠に分からない…底なし沼を覗き込むような、得体の知れない気味の悪さが残った。2017/05/13
きょちょ
19
同時期に起きた連続不審死事件の、鳥取の上田美由紀の方。東京の木嶋佳苗との共通点は、ブ〇・デ〇・金の亡者・嘘つきといったところか。異なるのは、著者の言う「鳥取というかなり閉鎖的社会」で、酒とセックスしか楽しみがない男たちが被害者ということか?しかし、木嶋の被害者も実人生に不満足な点で言えば同じかもしれない。でもまあ、何でこんな女に数百万からそれ以上もつぎ込むかね?いや、大昔、北新地の変な姉ちゃんに毎日のように通った私にはそんなこと言う権利はないわな。嫁さんにこの感想読まれないことを祈る( ´∀` )。★★★2020/07/08
ひねもすのたり
13
本書はいわゆる首都圏連続不審死事件と同時期に発覚した鳥取連続不審死事件を取材したルポルタージュ。 二人の容疑者の容姿から似た事件と思われがちですが、全く異なる要素を持っています。父親の違う5人の子供、ゴミ屋敷・・男たちはなぜ異界に住む女に近づき騙されたのか?そのあたりは消化不良の感が否めません。 ただ逆の言い方をするなら読者はそれぞれに自分の推論を差し挟む余地があるということです。 事件のきっかけとなった魔窟のデブ専スナック。ドアを開けヤバい!と思った瞬間、男たちは異界に取り込まれたようにも思います。★42017/06/05
緋莢
11
ある一人の女性の周りで複数の男が死んだ。しかも、死んだ男たちはその女性に金を貸す、貢ぐなどしていた。こう聞くと木嶋佳苗の事件を思い浮かべますが、この本で取り扱っているのは鳥取で起きた「鳥取連続不審死事件」です(木嶋佳苗の方は首都圏連続不審死事件)。この事件で逮捕された上田美由紀は際立って美しい容姿の持ち主でない、というのも木嶋佳苗の方と共通します。6人の男性との出会いとその後 どのように死んだのかが書かれていますが、1人目の新聞記者、3人目の刑事に関しては、その職業にまず驚きました(続く2018/12/16